DECREASE-I試験の不正が明らかになった2014年以降、「非心臓手術への周術期β遮断薬の有用性」が疑問視されるようになった。そこでこの点を確認すべく行われたのが、大規模ランダム化試験“POISE”である。30日追跡結果は2008年のLancet誌に掲載されたが、本学会では1年追跡結果が報告された。30日追跡と同様、β遮断薬は心筋梗塞(MI)を抑制する反面、総死亡を増加させていた。ポピュレーション・ヘルス研究所のPJ Devereaux氏が報告した。
本試験の対象は、動脈硬化性イベント既往/高リスクを有する、45歳以上の非心臓手術8351例である。β遮断薬群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で追跡された。いずれも術前2−4時間と6時間後に通常量の半量を、術後30日間は通常量を服用した。 対象の平均年齢は69歳、術前の平均心拍数は78拍/分、血圧は139/80弱mmHgだった。
1年後の総死亡率はβ遮断薬群:10%、プラセボ群:9%となり、β遮断薬群における有意なリスクの増加が認められた(HR:1.16、95%CI:1.01−1.34)。内訳を見ると、心血管系(CV)死亡リスクは有意に増えておらず(HR:1.10、95%CI:0.89−1.36)、非CV死亡リスクが増加していた(HR:1.22、95%CI:1.01−1.48)。総死亡、CV死亡とも、両群のカプランマイヤー曲線は、試験開始直後から乖離が始まっていた。
またCVイベントを比較すると、β遮断薬群では心筋梗塞と冠血行再建術の絶対リスクがそれぞれ、1%、0.5%有意に減少していたものの、脳卒中は逆に1%の有意増加だった。
Devereaux氏は「(MI減少など)β遮断薬の有効性を危険なく引き出す方法が見つかるまで、(周術期)β遮断薬の使用には注意が必要だ」とのコメントを出している。
本試験は、カナダ保健研究所など公的組織5機関とアストラゼネカ社から資金提供を受けた。