東日本大震災から7年が過ぎた。岩手県で最多の犠牲者を出した陸前高田市で、新しい地域包括ケアシステムの構築を目指す伊東紘一氏(済生会陸前高田診療所長)に話を聞いた。
陸前高田は妻の出身地です。震災で妻の母親と弟を亡くしました。震災1週間後から妻とこちらに来て捜索にあたる傍らで、私は医療活動に携わり、遺体安置所では約800人のご遺体を見ました。
東京と陸前高田を何十回と往復して医療活動を続ける中で、多くの被災者の姿を目の当たりにし、自然と「ここで医療をしなければならない」「行くぞ」という気持ちになりました。
病気で困っている人がいれば、そこに行って診るのが医者の仕事です。ですから決意というほど大げさなことではありません。
もう東京の自宅は引き払い、住民票も移しました。私が帰るところは、ここだけです。
常勤医は私1人で、週に1度、整形外科医が来てくれています。標榜は内科と整形外科ですが、実際の診療は、全身を診る総合診療です。第一線の現場なので興味深い症例をたくさん経験しています。
通院できない高齢患者も多いため、在宅医療も行っています。
はい。24時間、患者さんから連絡が取れる体制をとっています。ただ、4月から常勤で自治医大卒業の小児科医が1人来てくれるので、少し気持ちが楽になりますね。
在宅医療は医者にとっては移動時間が必要で効率的ではありませんが、寝たきりにならなくても、高齢になると患者にとって通院は大変です。高齢化が進んだ地域で在宅医療をしないと「生きた医療」とは言えないのではないでしょうか。