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脳腫瘍の治療法として開発が進むウイルス療法とは?(藤堂具紀 東大医科研先端医療研究センター教授)【この人に聞きたい】

No.4901 (2018年03月31日発行) P.8

藤堂具紀 (東大医科研先端医療研究センター教授)

登録日: 2018-03-30

最終更新日: 2018-03-29

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ウイルス療法が
固形がんの治療を大きく変え
多くの患者に福音をもたらす

とうどう ともき:1960年生まれ。85年東大卒。米ジョージタウン大学助教授、ハーバード大マサチューセッツ総合病院助教授などを経て、2003年東大脳神経外科講師、08年東大病院TRセンター特任教授、11年より現職。著書に「最新型ウイルスでがんを滅ぼす」(文春新書)など

がん治療の新たな切り札としてウイルス療法が注目されている。米国で「抗がんウイルス」を開発し、現在東京大学医科学研究所先端がん治療分野教授として脳腫瘍に対するウイルス療法の医師主導治験を進める藤堂具紀氏に、同療法の有効性と安全性、実用化の可能性を聞いた。

ヘルペスウイルスの遺伝子を組み換えた革新的ウイルス

─開発を進めているがんのウイルス療法はどういう治療法ですか。

ウイルス療法は、腫瘍細胞でのみ増えるウイルスを感染させ、がん細胞を破壊する治療法です。私が世界に先駆けて日本での製剤化を目指しているG47Δ(デルタ)は、口唇ヘルペスを引き起こす単純ヘルペスウイルスⅠ型の3つの遺伝子を組み換えたウイルスです。

G47Δは、正常細胞では増えずにがん細胞だけで増殖するのが特徴で、脳腫瘍の患者に行った臨床試験では、がんが消えたり進行が止まったりした患者もいます。また、がん細胞がウイルスに感染することで、抗がん免疫が効率的に活性化する作用があります。

がん幹細胞も破壊し再発を抑える可能性も

近年、放射線治療や化学療法でいくらがんを叩いても、がんの女王バチのような「がん幹細胞」が残るために、再発・転移が起こることが分かってきています。G47Δは、がん幹細胞を含めてがん細胞を皆殺しにするので、早い段階で投与すれば、再発率を減らせる可能性もあります。

国内外で他のウイルス療法の開発が進んでおり、既に悪性黒色腫の治療法として米国で実用化されているものもあります。

しかし、操作する遺伝子の数を増やすと一般的にはウイルスの攻撃力が弱まるため、他のウイルス療法は、2つの遺伝子を組み換えたウイルスを使うにとどまっています。G47Δは世界初かつ唯一、3つの遺伝子を組み換えてより安全性と攻撃力を高めた革新的なウイルスなのです。

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