高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)は,日本医療機能評価機構『Minds』の作成の手引きにできるだけ沿って作成された。例を挙げると,Delphi法の使用,AGREEⅡによる2回の評価での改善,推奨グレード・エビデンスレベルの併記,透明性などである。一方,家庭血圧評価,若・中年者高血圧の降圧目標,第一選択薬からβ遮断薬を削除,合併症(脳,心,腎,糖尿病,妊娠)を有する高血圧や高齢者高血圧での降圧目標などの重要な変更があった。
日本高血圧学会(JSH)の高血圧治療ガイドラインは,日本人の疾病構造に合わせて高血圧を管理すべく,JSH2000,JSH2004,JSH2009と約5年ごとに作成され,JSH20141)(島本和明委員長)は2014年4月に公表された。
JSH20141) は,日本医療機能評価機構『Minds』の『診療ガイドライン作成の手引き』にできるだけ沿って,さらに脳卒中が心筋梗塞より多いという日本人の疾病構造を背景に,わが国の実状に即したガイドラインをめざして作成された。
JSH2014では,ガイドラインとはその時点での標準的治療を示すもので,法律・規則ではなく,医師の処方裁量権を侵害するものではないことを明示している。作成方針としては,実地医家のための透明性の高いガイドラインをめざしている。
さらに,エビデンスの数と質,結論のばらつき,有効性の大きさ,臨床上の適応性,有害事象やコストに関するエビデンスまで加味したevidence based consensus guidelineをめざした。
コンセンサス形成の方法として,群集心理によるバイアスの影響(バンドワゴン効果)や声の大きい委員,権威のある委員による討論・作成への影響(ハロー効果)を回避するため,基本的にはまず各委員が1人で考え,ついで集団で討論し,再度各委員が1人で考えるというDelphi法を基礎に,nominal group technique(個人の意見を書く,意見を共有,説明,投票),consensus conferenceといった3つの要素をすべて取り入れ,高血圧学会方式とも言える新しい合意形成方法で行った。
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