高齢者とは,一般的には65歳以上が前期高齢者,75歳以上が後期高齢者と定義されている。厚生労働省のデータでは,2016年の日本人の平均寿命は男性80.98歳,女性87.14歳と過去最高を更新しており,このペースで高齢化が進むと,25年には日本国民の3人に1人が65歳以上,5人に1人が75歳以上という状況が予想され(2025年問題),わが国は未曾有の超高齢社会を迎えようとしている。
救急医療の現場で高齢者救急を考えてみると,総務省の16年のデータでは,65歳以上の高齢者の全国救急搬送件数は320万件を超え,年齢区分別の構成比が救急搬送全体の57.1%を占めており,救急搬送の5人に3人は高齢者が搬送されていたことになる。
そのような折,17年1月に日本老年医学会より高齢者の新定義が提案された。その提案では,以前は前期高齢者とされていた65~74歳は「准高齢者」とし,75~89歳を「高齢者」,90歳以上を「超高齢者」としている。これは高齢者の定義を65歳から75歳に引き上げるという提案である。
しかし,平均寿命とは別に健康な状態で日常生活を送ることができる「健康寿命」から考えると,内閣府のデータで13年の健康寿命は男性71.19歳,女性74.21歳とされており,新定義の高齢者(75歳)までに何かしらの健康トラブルが起こる可能性が示唆される。事実,15年の全国救急搬送件数の65~74歳が占める割合は全体の16.4%と救急搬送の一定量を占めており,高齢者の定義が変わったとしても超高齢社会における救急搬送のニーズは増えることになりそうだ。
【解説】
土井智章 岐阜大学医学部附属病院 高次救命治療センター講師