□従来,廃用症候群(disuse syndrome)という用語は骨折に対するギプス治療などの外固定に基づいて生じる筋委縮,関節拘縮,骨萎縮等の運動器の障害に使われていたが,虚弱で要介護状態の高齢者の増加に伴い,この概念は拡大された。活動性の低下によってベッド上の生活になるなど,生活していくために本来備わっている身体機能を有効に使わなくなったことから生じる二次的,三次的な生活機能障害の総称となった。
□病態の回復が困難な場合は生命に関わる病気でもある。積極的な医療介入を行わずに終末期医療へ移行することもある。
□フレイルやサルコペニアなど比較的新しい疾病概念との関係性が十分に整理されておらず,様々な要素が重なっている。
□治療の視点では,栄養管理やリハビリテーションが重要で,ケアの視点では可及的に活動的な生活を支援することが大切となり,心理社会的な要因への配慮も求められる。
□以下,きわめて多彩な症状を呈する。
□運動器系:筋委縮,サルコペニア,骨粗鬆症,関節拘縮,病的骨折。
□呼吸器系:肺活量低下,喀痰排出困難,誤嚥性肺炎。
□循環器系:血栓性静脈炎,心不全。
□泌尿器系:尿失禁,尿路感染症,尿路結石。
□消化器系:嚥下障害,誤嚥,食思不振,便通異常(便秘・下痢),イレウス。
□皮膚:褥瘡。
□精神神経系:認知機能低下,抑うつ,意欲の低下。
□その他:低栄養,脱水など。
□X線:骨萎縮の診断には骨塩量測定が有用である。
□血液検査:低栄養,サルコペニア,脱水所見の有無をみる。
□上肢,下肢周囲系の計測および視診により,筋萎縮の評価を行う。
□身体的要因だけでなく,心理的,社会的な要因へも目を向ける。
□外出支援が動機づけになることがある。
□離床と経口摂取を原則とし,孤食を是正する。
□改善が期待できない場合には,苦痛を緩和させる治療を最優先する。
□過度の安静,不適切な薬物療法,経口摂取制限など,医原性である可能性を否定する。
□血液検査等で基準値外の場合があっても,検査値を改善させるための医療介入は慎重に行う。たとえば,①大球性貧血に対する鉄剤投与,②脱水による高尿酸血症に対する尿酸排泄薬投与,③低アルブミン値の高コレステロール血症に対する脂質異常症治療薬投与,などである。
□苦痛の緩和を医療介入妥当性の根拠とすべきである。
□生活の質を高める視点が重要である。
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