□呼吸困難は「呼吸時の不快な感覚」であり,低酸素血症(動脈血酸素分圧PaO2<60Torr)で定義される呼吸不全とは必ずしも一致しない。
□呼吸困難の原因は呼吸器・循環器疾患以外にも多岐にわたり,がん終末期患者の多くが抱える難治性症状の1つである。
□在宅医療の現場では,問診・身体所見と限られた検査によって病態と緊急性の有無を判断しなければならない。
□modified British Medical Research Council(mMRC)質問票(表1)1)や,Fletcher-Hugh-Jones(F-H-J)分類(表2)1)を用いることが多い。
□突然発症:喘息,気胸,肺塞栓,気道内異物,薬物中毒,アナフィラキシーなどを疑う。
□急性発症:喘息,緊張性気胸,重症肺炎,心不全,心タンポナーデ,過敏性肺臓炎,ARDS,慢性呼吸器疾患(COPD,間質性肺炎など)の急性増悪,胸水貯留,パニック発作,過換気症候群などを疑う。
□慢性発症:心不全,慢性心疾患,喘息,COPD,慢性肺塞栓,肺腫瘍,上気道閉塞,胸水,慢性呼吸器感染症(肺結核など),不安障害,パニック障害,肥満,甲状腺疾患,低栄養,貧血,神経筋疾患,脊柱後側弯症などを疑う。
□夜間や早朝に症状が出現し,日内変動がある場合は喘息を疑う。
□夜間就寝時仰臥位で増悪し,起坐呼吸を示す場合は心不全を疑う。
□就寝中の息苦しさや中途覚醒は,睡眠時無呼吸症候群でもみられる。
□呼吸困難が吸気性なら胸郭外気道狭窄(喉頭や気管上部の狭窄),呼気性なら胸郭内気管支狭窄(喘息やCOPD)を疑う。
□リズム異常があれば,チェーンストークス呼吸(心不全,中枢神経疾患)や,クスマウル呼吸(糖尿病性ケトアシドーシス)に注意する。
□胸痛を伴えば気胸,肺塞栓,心筋梗塞,解離性大動脈瘤などを疑う。
□血痰があれば肺塞栓,肺結核,肺腫瘍などを疑う。
□痰の性状が膿性なら肺炎や気管支拡張症などの感染症,ピンク泡沫状なら心不全や肺水腫を疑う。
□意識障害を伴えばCO2ナルコーシスの可能性を疑う。
□四肢のしびれは過換気症候群でみられる。
□頻呼吸で浅い呼吸は拘束性換気障害で起こりやすく,間質性肺炎や気胸,胸水,肺水腫などでみられる。頻呼吸で深い呼吸は過換気症候群でみられる。
□徐呼吸で深い呼吸は糖尿病性ケトアシドーシスや尿毒症などで,徐呼吸で浅い呼吸は薬剤や中枢神経疾患などでの中枢性肺胞低換気の際にみられる。
□呼気の延長や口すぼめ呼吸はCOPDや喘息発作などの気道狭窄時にみられ,吸気の延長は上気道の狭窄でみられる。
□呼吸音の左右差や限局性の呼吸音減弱は,胸水や気胸の存在を疑う。
□湿性ラ音は肺炎や気管支拡張症などで,wheezeは喘息やCOPD,心不全などで,fine crackleは間質性肺炎で聴取する。
□心不全ではギャロップ音を聴取する。
□頸静脈怒張(右心不全),ばち指(慢性呼吸不全),胸郭変形(脊椎後側弯症,脊椎カリエス後遺症,胸郭形成術後),ビア樽胸郭(COPD)など。
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