No.5187 (2023年09月23日発行) P.54
高雄由美子 (兵庫医科大学病院ペインクリニック部 教授)
上野博司 (京都府立医科大学麻酔科学教室准教授)
登録日: 2023-09-22
最終更新日: 2023-09-19
【質問者】高雄由美子 兵庫医科大学病院ペインクリニック部 教授
【がん疼痛と非がん性疼痛ではオピオイド鎮痛薬の使用方針が異なるので,注意が必要である】
米国では,オピオイドの過量摂取により毎日100人を超える死者が出る状況が現在も続いています(いわゆるオピオイドクライシス)。これは,ビル・クリントン大統領により,21世紀の最初の10年を「痛みの10年」として,痛みの診療,研究,教育に重点を置いた施策が行われたことに端を発しており,医師から処方されたオピオイド鎮痛薬の不適切使用が主な死亡原因となっています。
オピオイド鎮痛薬は,オピオイド受容体を介して優れた鎮痛効果を発揮する反面,脳内報酬系を賦活して多幸感や抗不安作用をもたらします。これを求めてオピオイド鎮痛薬を使用するようになると自己制御が困難となり,呼吸抑制などにより致死的になるまでオピオイド鎮痛薬を渇望するようになってしまいます。これがオピオイドクライシスの本質です。
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