帝王切開術の適応は,胎児適応,母体適応,母児双方の適応など多様である。緊急手術が多く,胎児徐脈などでは超緊急帝王切開術となる。さらには母体の併存疾患を考慮して,緊急度に応じた麻酔計画を事前に立案しておきたい。
産科医による診断と,児娩出までの時間的猶予を把握する。麻酔科医による診察によって,気道確保困難や区域麻酔(脊髄幹麻酔)困難のリスク因子の有無を評価する。直前の血液検査所見や抗血栓薬投与状況に基づき,区域麻酔が施行可能かどうか判断する。
予定帝王切開術の麻酔法は,脊髄くも膜下麻酔が第一選択となる。その理由は,①全身麻酔に伴う母体合併症(気道確保困難や誤嚥性肺炎)を回避できる,②局所麻酔薬による児への薬物影響がない,③母親が出産の記憶を保つことができる,からである。
緊急帝王切開術の麻酔法も,脊髄くも膜下麻酔が第一選択であるが,硬膜外無痛分娩を受けている産婦の場合は,帝王切開術の麻酔法として硬膜外麻酔を行うこともできる。超緊急帝王切開術の場合は,麻酔導入から児娩出までの時間を最も短くできる全身麻酔が適している。
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