高齢者の貧血にはしばしば複数の原因が存在する
貧血の患者では大球性でなくても骨髄異形成症候群(MDS)を念頭に置く
MDSには形態診断が必須であるが,異形成の有無だけでなく定量的な観点で評価する
予後予測には骨髄中の芽球割合,血球減少の状態を用いるが,染色体異常が最も重要であり,生存期間の予測に限っては年齢補正を行うことができる
高齢者にみられる貧血の原因は様々であり,単一とは限らない。それらは赤血球の喪失(出血),破壊(溶血),産生低下に大別される。出血で多いのは消化管出血で,消化性潰瘍,消化管悪性疾患,肛門疾患などが原因となる。女性では性器出血の有無にも留意する。溶血では自己免疫性溶血性貧血がしばしば高齢者でもみられる。温式抗体によるものが多く,特発性,悪性腫瘍に伴うもの,薬剤性などに分類される。
赤血球産生低下をきたす病態では,二次性貧血または慢性疾患に伴う貧血(anemia of chronic disorders:ACD)に留意する。ACDの原因は多岐にわたるが,反復あるいは慢性感染症,悪性腫瘍,膠原病,炎症性腸疾患,加齢に伴うサイトカイン調節障害などが挙げられる。二次性貧血はACDよりやや広い概念であり,慢性肝疾患,腎疾患,内分泌疾患,低栄養なども貧血の原因となる。高齢者では栄養摂取不良がしばしば問題となり,各種ビタミン欠乏や微量元素欠乏を合併する場合もある。造血能が低下する疾患では,造血器悪性腫瘍,再生不良性貧血,赤芽球癆,骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)などが列挙されるが,その中でもMDSは患者数も多く,正確に診断されていないケースも多いと推測される。