健常高齢者の血液細胞には何らかの遺伝子変異が蓄積している
骨髄異形成症候群(MDS)において高頻度に認められるDNMT3A,TET2,ASXL1の変異が,いまだMDSを発症していない健常高齢者の10%にクローン性造血を起こす(CHIP)
CHIPを起こす遺伝子変異に加えてさらに遺伝子変異が蓄積するとMDSを発症する
骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)は血球減少と白血病進展を特徴とする,高齢者に多い骨髄系悪性腫瘍である。原因は様々なゲノム異常で,これまで50余の遺伝子(図1)がMDSを引き起こす,いわゆるドライバー変異をきたすことが報告されている1)。MDS細胞を次世代シーケンスにより解析すると,1症例当たり複数のドライバー変異が検出される2)3)。したがって,MDSが発症するまでの一生のうちに複数のドライバー変異が血液細胞に蓄積することが示唆された。実際,近年の詳細な研究により,どの遺伝子にどのタイミングで変異が獲得されるとMDSを発症するか,詳細が明らかにされた4)。まず,MDSを発症する以前に獲得される遺伝子変異について説明する。