No.4916 (2018年07月14日発行) P.24
長尾和宏 (長尾クリニック院長)
登録日: 2018-07-17
最終更新日: 2018-07-12
6月23日(土)、東京大学において日本尊厳死協会が主催する第7回日本リビングウイル研究会が開催された。今回のテーマは「終末期鎮静」。定員400人の会場は開始前に超満員になり立ち見が出た。このテーマへの医療者や市民の高い関心がうかがえた。あるいはシンポジストが緩和医療のなかでも鎮静に関する第一人者の森田達也先生(聖隷三方原病院)、ホスピス勤務を経て現在は在宅で活躍されている山崎章郎先生(ケアタウン小平クリニック)、そして生命倫理の第一人者の会田薫子先生(東大)と豪華な顔ぶれだったからかもしれない。いずれにせよ一般市民が音頭を取り縦割りの医学会の枠組みではない第一人者たちによる議論の場を設定できた。
終末期の鎮静には浅いものと深いものがある。また間欠的な鎮静と死まで続く持続的鎮静に分けられる。今回は主に「終末期における深い持続的鎮静」について議論した。森田先生は鎮静に関する世界の知見と最近の動向について解説した。山崎先生は自らの在宅ホスピスにおける「鎮静率」は約7%とそう高くはないことを述べた。会田先生は終末期の深い持続的鎮静とは、他に緩和の方策が尽きた時の「まだましな選択である」と述べた。がん遺族会「青空の会」代表である中野貞彦氏は遺族らに行ったアンケート調査を紹介した。中野氏らの分析では鎮静を行わなかった遺族の感想は「穏やかだった」が多い一方、鎮静を行った遺族では「後悔はない」という表現が多かった。鎮静群がわざわざ「後悔していない」と表明すること自体、多少なにか心にひっかかるものがあるのかもしれないと思った。会田先生はこの調査結果を倫理的視点からは「衝撃的」と表現されたが、私も同感だ。自然死と鎮静死の比較研究はまだ始まったばかりである。