【司会】 木全心一(JCHO東京新宿メディカルセンター名誉院長)
【演者】 川名正敏(東京女子医科大学病院副院長・総合診療科教授)
駆出率(EF)40%以上の左室駆出率(LVEF)が保たれた心不全(HFpEF)が最近増加しており,高齢,女性,高血圧,心房細動の合併が特徴である
左室収縮障害を呈する慢性心不全の治療はACE阻害薬,ARB,β遮断薬が基本である。さらにアルドステロン拮抗薬に予後改善効果が認められたためリバイバルし,現在は重要な薬剤となっている
急性心不全の重症度判定にはうっ血所見と低灌流所見によるNohria-Stevenson分類を使用し,ON-NIVに従って治療する
国立社会保障・人口問題研究所によると,2015年から人口が減少しはじめ2050年頃まで減少し続ける一方,65歳以上の高齢者は増加し,心不全患者数はその間も増え続け,50年ぐらいをピークに少し減少すると推定されています。わが国の心不全の疫学調査にはHIJC-HF,JCARE-CARD,ATTENDがありますが,ここでは東京女子医大循環器内科関連施設のHIJC-HFを紹介します。関連施設を含め心不全で入院した3578例の連続登録で,追跡率98%以上,退院3175例,平均年齢70歳,男女比約6:4という集団です。年齢分布のピークは60歳代後半から70歳近いところで,75歳以上は男性35%,女性56%で,心不全はやはり高齢者の疾患であるということがわかりました。
左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)は60%以上が正常ですが,HIJC-HFではそれほど収縮障害がない50%以上が33%,40~50%が20%,30%未満が26%でした。LVEFが保たれていれば心不全ではないという時代もありましたが,現在はLVEFが保たれていても心不全患者はたくさんいるということです。欧米各国のデータを見ても,EF 40%以上でも心不全患者がけっこうおり,常に取り扱いが問題になっています。最近ではLVEFが保たれた心不全(heart failure with preserved EF:HFpEF),EFが低下した心不全(heart failure with reduced EF:HFrEF)という言い方をします。
HIJC-HFでは,40~50%は境界で収縮と拡張のどちらが悪いかわからず,50%以上(HFpEF)と40%以下(HFrEF)の2群にわけたところ,HFpEFは高齢,女性,高血圧,心房細動の合併が特徴でした。現在はHFpEFが増加しています(表1)。
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