月経のある時期の日本人女性のおよそ2割に鉄欠乏性貧血がみられる
高齢者の鉄欠乏性貧血では消化管腫瘍の可能性を念頭に置く
鉄欠乏性貧血では心不全症状がみられるほか神経・精神症状との関連も報告されている
血清フェリチン値は,診断と治療効果のモニタリングに必須である
治療の基本は経口鉄剤で,やむをえず静注用の含糖酸化鉄を継続的に投与する場合は,骨軟化症の予防のため血清リン値をモニタリングする
世界保健機構(World Health Organization)では,成人男性のヘモグロビンの正常値を13g/dL以上,妊婦を除く成人女性では12g/dL以上としている1)。この基準を当てはめると,20~49歳の日本人女性のおよそ2割に貧血がみられ(図1),ヘモグロビンが10g/dL未満の中等度以上の貧血も2~5%にみられる2)。2009年(平成21年)の国民健康・栄養調査によると,この年代の女性の40%以上で,血清フェリチン値が15ng/mL未満であった3)。この年代の日本人女性の多くが鉄欠乏状態と推定される(図2)。高齢者においても,鉄欠乏状態の割合が増加する。同調査によると70歳以上の男性のおおよそ5%,女性の12%で血清フェリチン値が15ng/mL未満であった。この年代では,消化管の悪性腫瘍などの重大な疾患が隠れている可能性も考える。