【質問者】
南学正臣 東京大学医学部附属病院腎臓内分泌内科教授
【3年間程度の投与で大きなメリットがあると考えられる。併用薬,サルコペニア等に注意】
2型糖尿病患者は肥満症,高血圧症,脂質異常症,高尿酸血症,動脈硬化症など多くの生活習慣病・血管合併症を合併します。またレニン・アンジオテンシン(renin-angiotensin:RA)系阻害薬の使用,dipeptidyl peptidase(DPP)-4阻害薬・glucagon-like peptide(GLP)-1受容体アゴニストなど新しい糖尿病薬の登場,高齢化などによりネフローゼ症候群に至るような典型的なdiabetic nephropathyは減少し,蛋白尿があまり増加せずに末期腎不全に至る症例も増加してきました。
そこで,そのような症例をもれなく治療するために「糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)」という,より包括的な概念が打ち出されました。SGLT2阻害薬には血糖降下,体重減少,内臓脂肪減少,脂肪肝改善,脂質プロファイルの改善,尿酸値低下,血圧降下など多面的な効果があるため,糖尿病性腎臓病への治療効果が期待されていました。実際,心血管疾患を有する2型糖尿病患者を対象とするEMPA-REG OUTCOME試験では,心血管死のリスクを38%,全死亡のリスクを32%有意に減少させ,糖尿病性腎臓病の腎複合エンドポイントを39%低下させました。投与直後よりいったんeGFRを低下させるものの,その後eGFRがプラセボ群と比較して明らかに保持されました1)。心血管疾患や糖尿病性腎臓病を有する患者では3年間程度の投与では大きなメリットがあると考えられます。血圧低下作用・血糖降下作用・尿細管糸球体フィードバック(tubuloglomerular feedback:TGF)の増強による糸球体過剰濾過の抑制,近位尿細管細胞へのブドウ糖流入抑制による酸化ストレスの抑制が糖尿病性腎臓病への治療効果の機序として提唱されています2)。
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