左室機能低下例に対するACE阻害薬の有用性を証明したSOLVD試験が、その後付け解析で、左室機能低下例におけるワルファリンの有用性を示唆してから20年が経つ。しかし未だに、そのような患者に対するワルファリンの有用性は証明されていない。そこで、ワルファリンではなくXa因子阻害薬による抗凝固療法を検討する、COMMANDER HF試験が行われた。しかしワルファリンと同様、有用性は認められなかった。27日の「HOTLINEセッション3」にて、Faiez Zannad氏(ロレーヌ大学、フランス)が報告した。
COMMANDER HF試験の対象は、冠動脈疾患(CAD)合併、心房細動(AF)非合併の左室機能低下心不全(HFrEF)例のうち、直近21日以内に急性増悪を経験した5022例である。出血高リスク例、脳血管障害既往例、虚血性以外の心不全例は除外されている。
平均年齢は66歳、女性は20%強のみだった。心不全治療に関しては、99.5%が利尿薬を服用し、92.8%がレニン・アンジオテンシン系阻害薬、92.4%がβ遮断薬、76.5%がアルドステロン拮抗薬を服用していた。抗血小板薬も、93.1%がアスピリンを服用し、34.8%は2剤併用となっていた。
これら5022例は、Xa因子阻害薬リバーロキサバン2.5mg×2/日群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で21.1カ月(中央値)観察された。リバーロキサバンを選んだのは、急性CAD既往例を対象としたATLAS-ACS2試験、慢性CAD対象のCOPMASS試験のいずれにおいても、後付け解析で心不全例に対する有用性が示唆されていたためだという(いずれも報告時には未公表データ)。
結果だが、1次(Primary)評価項目である「死亡・心筋梗塞・脳卒中」の発生率は、Xa因子阻害薬群: 25.0%、プラセボ群:26.2%となり、両群間のリスクに有意差はなかった(Xa因子阻害薬群ハザード比 [HR] :0.94、95%信頼区間 [CI]:0.84-1.05)。そこで、心不全を対象としたランダム化試験で1次評価項目に用いられることが多い、「心血管系死亡・心不全入院」(2次評価項目)を比較したが、Xa因子阻害薬群における有意な減少は認められなかった(HR:0.99、95%CI:0.91-1.09)。
同様に、主要(Principal)安全性評価項目である「致死性出血・不可逆的障害が残り得る出血」の発生リスクにも、両群間で差はなかった(Xa因子阻害薬群:0.44/100例・年、プラセボ群:0.55/100例・年、HR:0.80、95%CI:0.43-1.49)。ただし「ISTH大出血」のリスクは、Xa因子阻害薬群で有意に高くなっていた(HR:1.68、95%CI:1.18-2.39)。
本研究は、Janssen Research and Development社から資金提供を受けて行われた。また報告された27日、N Engl J Med誌にオンライン掲載された。