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口渇[今日読んで、明日からできる診断推論 実践編(20)]

No.4720 (2014年10月11日発行) P.37

監修: 野口善令 (名古屋第二赤十字病院 副院長・総合内科部長 )

吉藤 歩 (慶應義塾大学医学部内科学教室腎臓内分泌代謝内科)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-23

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  • 病 歴

    80歳,男性。主訴は口渇。2型糖尿病(罹患期間15年)による慢性腎不全・慢性心不全にて当院通院中。2カ月前より,徐々に口渇感が強くなり,夜間の頻尿も自覚したため,受診した。ここ数週間は食欲の低下も認め,お粥や果物であればなんとか食べられる状態とのこと。胸痛の訴えはない。そのほかの自覚症状は乏しい。

    スナップ診断

    2型糖尿病患者であり,血糖コントロール悪化による口渇を疑う。症状の悪化により,糖尿病性ケトアシドーシスに至っていないかチェックする必要がある。また,高齢者の血糖コントロールが急激に悪化する場合には,何らかの感染や悪性腫瘍が背景にあることもあり,増悪の原因についても考慮する必要がある。
    見逃してはいけない疾患として,ビタミンD製剤内服または悪性腫瘍による高Ca血症をきたしていることもあり,こちらのルールアウトも重要となる。
    関節炎や眼の乾燥の症状に乏しく,シェーグレン症候群の可能性は低いと見積もる。


    分析的アプローチ

    ■なぜその疾患名が挙がったのか

    口渇の鑑別疾患について,図1に示す。本症例は2型糖尿病および,その合併症としての慢性腎不全・慢性心不全の既往がある。
    何らかの要因(感染や悪性腫瘍など)で2型糖尿病患者の血糖コントロールが増悪し,口渇をきたしている可能性をまず考える。また,慢性腎不全や慢性心不全が増悪し,口渇をきたしている可能性も考慮する。
    高齢者に多い高Ca血症や低K血症に伴う腎性尿崩症も見逃してはいけない事項である。高齢者が高Ca血症をきたす原因としては,ビタミンD製剤の内服そして悪性腫瘍がある。加えて,本症例では腎不全と心不全を合併しているため,利尿薬を必要以上に使用し,循環血液量が減少していないか注意する。
    口渇の原因としてしばしば鑑別疾患に挙がる1型糖尿病や中枢性尿崩症は急激な経過をたどることが多く,本症例では否定的である。シェーグレン症候群についても,経過や随伴症状から考えにくい。

    私のクリニカルパール

    2型糖尿病患者の血糖コントロールが悪化した場合,患者のコンプライアンスや食事のせいにしがちであるが,なぜ増悪したかを検討する必要がある。

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