(千葉県 M)
【気温差,相対湿度に留意し,各施設の状況に応じたルールづくりが必要】
一般的には,「直射日光の当たる場所」「冷暖房の風が当たる場所」「加湿器の近く」を避け,床から高さ1.1mほどの位置に置くと,より正確に温度・湿度を計測することができます。ちょうど目の高さあたりです。また,設置部分も壁紙やクロスではなく柱面にすると,結露で数値が変わる心配がなくなります。
温度・湿度調整がうまくいかないと,夏期では冷やしすぎによる冷房病,冬期では相対湿度の低下によるインフルエンザの蔓延が懸念されます。
温度については,暖房時は,暖かい居室と寒い脱衣室・廊下・トイレとの温度差が大きくなると,心臓に思った以上の負担がかかるので,「室間温度差」は5℃以内に抑えましょう。また,暖房時は暖められた空気が天井付近にたまりやすいため,頭付近の温度が高く足元が低い,いわゆる「上下温度差」が大きくなる恐れがあります。床が冷たいと足の感覚が鈍り,つまずく,転倒するなどの事故が発生しやすくなります。このためISO7730(国際標準化機構の規格)では,「上下温度差」については±3℃以内を推奨しています。
冷房時は,過度の冷房による神経痛や腰痛,胃腸障害,または疲れやすくなったり,かぜを引きやすくなったりするなど,いわゆる冷房病を引き起こす可能性があります。このため室内温度は25~28℃,外気との温度差は7℃以内に維持しましょう。
また,相対湿度については,暖房時は,低湿度の外気の影響により室内の相対湿度は低下します。湿度が極端に低い場合,呼吸器粘膜が乾燥し細菌やウイルスに対する防御機能が低下するため,かぜを引きやすくなります。また,インフルエンザウイルスの活性を高め,集団感染が起きやすくなります。このため冬場の相対湿度は40%以上を確保しましょう。
冷房時は,湿度が極端に高い場合,汗の蒸散を妨げられ不快に感じたり,カビやダニの成育を促したりします。このため夏場の相対湿度は70%以下に抑えましょう。
時間帯や人数,施設の構造や管理状況により異なりますので,1時間ごとに1~3分間開けるなど,施設の状況に応じて,ルールを決める必要があります。大切なことは,空気の入口と出口の2箇所を開け,空気の通り道をつくることです。
【文献】
1) 東京都福祉保健局健康安全室環境水道課, 編:社会福祉施設管理者のための環境衛生設備自主管理マニュアル─維持管理の手引き. 2005.
[http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/eisei/yomimono/shakaifukushishisetu/shakaifukushishisetu-manyuaru.html]
2) 東京都福祉保健局健康安全部環境保健衛生課, 編:室内空気の揮発性化学物質対策のために施設で決める換気のルール.
[http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/kankyo_eisei/jukankyo/indoor/indoor index/pamphlet.files/myrule.pdf]
【回答者】
稲野聖子 老人看護専門看護師