慢性腎臓病(CKD)とサルコペニアでは,蛋白質摂取量に対する指針が現状では食い違っている
進行しないタイプのCKDに対しては,蛋白質摂取量を増やす方針とする
一般的にはサルコペニア対策を優先すべき症例が多いと思われる
管理栄養士がいない施設での食事療法管理は難しい
多職種の揃わない施設や地域では,腎臓病療養指導士が1人3役となって基本的な疾患管理を担当できる
二次性サルコペニアの大きな原因として,低栄養状態が挙げられる。食事摂取量が低下する場合,何か1つの栄養素摂取が減少することは少なく全体的に減少するが,その中でもエネルギー,蛋白質の摂取不足はサルコペニアに直結するとされている。蛋白質は摂取後アミノ酸に分解され,これが筋蛋白合成のもととなる。ただし同量を摂取しても若年者と高齢者では蛋白合成反応が異なる。このため,同じ量の筋蛋白を合成するためには高齢者のほうが蛋白質を多く摂取する必要があり,同じ量の蛋白質摂取では高齢者のほうが筋蛋白合成は少量となる(図1)1)2)。
これがサルコペニア発症の原理であると考えられており,「日本人の食事摂取基準2015年版」でも,サルコペニアのリスクがある場合には,予防のためにより多くの蛋白質摂取が推奨されているものの,その具体的な摂取量についてはエビデンスが不足しているために明記されていない3)。
以上より,若年者よりもサルコペニアのリスクが高い高齢者は,一般に蛋白質摂取量を若年者よりもむしろ増やし,運動もより多くしなくてはいけない。しかしながら加齢に伴い運動量は減り,食事の嗜好も肉から野菜へというのがわが国の高齢者の一般的な傾向ではないだろうか。この自然な食生活の変化にあえて反対する食事摂取を指導するというのは,コンプライアンスを保つ意味でもなかなか難しいことである。