ランダム化試験 "LEADER"、"SUSTAIN-6" において、心血管系(CV)イベント高リスク2型糖尿病(DM)例に対するCV予後改善作用が報告されているGLP-1アナログに、さらなるエビデンスが加わった。10月2日に欧州糖尿病学会で報告されたHarmony Outcomes試験である。週1回型GLP-1アナログはプラセボに比べ、CV疾患既往を有する2型DM例の「CV死亡・心筋梗塞(MI)・脳卒中」リスクを相対的に22%、有意に低下させた。John McMurray氏(グラスゴー大学、英国)らが報告した。
Harmony Outcomes試験の対象は、2型DMと診断され「HbA1c>7.0%」、かつ冠動脈、脳血管、末梢動脈の少なくともいずれかにアテローム性動脈硬化疾患を認めた40歳以上の9463例である。「eGFR<30mL/分/1.73m2」、「膵炎高リスク」例などは除外されている。平均年齢は64歳、糖尿病罹患期間平均値は14年だった。全例にガイドラインに準拠した2型DM治療が推奨されており、82%がレニン・アンジオテンシン系阻害薬、84%がスタチン、77%がアスピリン、26%がP2Y12 阻害薬を服用していた。これら9463例は、GLP-1アナログであるアルビグルチド週1回皮下注群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で観察された。
その結果、中央値1.6年間の観察期間中、1次評価項目である「CV死亡・MI・脳卒中」は、GLP-1アナログ群:4.6例/100例・年、プラセボ群:5.9例/100例・年で認められ、GLP-1アナログ群におけるハザード比(HR)は0.78と有意に低くなっていた(95%信頼区間[CI]:0.68-0.90)。また両群のカプラン・マイヤー曲線は、試験開始後1年を待たずに乖離を始め、試験終了時まで開き続けた。これらを「CV死亡」、「MI」、「脳卒中」に分けて比較しても、GLP-1アナログ群で増加傾向を認めるものはなかった。また、試験開始時のインスリン使用の有無、メトホルミン服用の有無とGLP-1アナログによるイベント抑制作用の間に、有意な交互作用は認められなかった。
このイベント発生率を「きわめて高い」と、McMurray氏は評価した。事実、本試験は当初、1次評価項目が611例で生じた時点で試験を中止するはずだったが、想定以上にイベントが多発したため、それでは十分な観察期間が確保できないと判断。2017年4月に「観察期間中央値が1.5年となるまで観察」とプロトコールが変更された(ClinicalTrials.govには記載なし)。イベント多発の原因については、言及されなかった。
さて、上記の結果はすべて、Intention-to-treat解析である。しかし本試験ではGLP-1アナログ群生存例の24%、プラセボ群生存例の27%が、試験中に使用を中止している。そこでプロトコール遵守例のみで比較を行ったが、やはりGLP-1アナログ群で有意な1次評価項目減少を認めた(HR:0.80、95%CI:0.68-0.93)。なお本試験と同じくGLP-1皮下注剤を用いた、前出SUSTAIN-6試験におけるGLP-1アナログ中止率は約20%だった(観察期間中央値:2.1年)。
安全性に関し、重篤な有害事象が報告されたのは、GLP-1アナログ群:19.8%、プラセボ群:21.7%で有意差はなかった。またGLP-1アナログで増加が疑われている有害事象を事前に設置して比較したが、2%以上の発現率を認めたのは「腎機能障害」、「肺炎」、「心房細動/粗動」であり、いずれもGLP-1アナログ群とプラセボ群の間に有意差は認めなかった。GLP-1アナログ群で唯一有意に増加していたのは、「注射部位反応」だった(2% vs. 1%)。「膵炎」発生率は両群とも1%に満たず、有意差はなかった。「肝障害」にも、有意な群間差はなかった。なお、心拍数はGLP-1アナログ群でプラセボ群に比べ、試験開始8カ月後に1.3拍/分、16カ月後に1.4拍/分、それぞれ高くなっていた。安全性に問題なしというのが、報告したChristopher Granger氏(デューク大学、米国)の結論である。
本研究は、GlaxoSmithKline社の資金提供を受けて行われた。また報告と同時にLancet誌にオンライン掲載された。付随する論説は、安全性を評価するには観察期間が短すぎると指摘している。実臨床を考えると、CV1次予防2型DM例を対象としたランダム化試験が待たれる。