No.4929 (2018年10月13日発行) P.39
谷口正実 (国立病院機構相模原病院臨床研究センターセンター長)
三井千尋 (国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
林 浩昭 (国立病院機構相模原病院臨床研究センター呼吸器内科)
富田康裕 (国立病院機構相模原病院臨床研究センター呼吸器内科)
上出庸介 (国立病院機構相模原病院臨床研究センター呼吸器内科医長)
渡井健太郎 (国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー科)
福冨友馬 (国立病院機構相模原病院臨床研究センター診断・治療薬開発研究室室長)
関谷潔史 (国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー科医長)
登録日: 2018-10-15
最終更新日: 2018-10-10
NSAIDs過敏症は,非免疫学的な不耐症と単独アレルギーなどに分類される
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)では,原因食物と運動だけでなく,NSAIDsとの同時摂取で誘発されやすい
気道型のNSAIDs不耐症は,成人喘息の約10%を占め,アスピリン喘息(AERD)と称され,重症喘息,好酸球性副鼻腔炎,NSAIDs過敏が特徴である
AERDでは,セレコキシブやアセトアミノフェンが安全に使用できるが,COX-1阻害作用を有するすべてのNSAIDsで致死的な喘息発作を生じやすい
NSAIDs不耐症の鑑別として,単一のNSAIDを継続使用し免疫グロブリン(Ig)E感作が生じることによるNSAIDアナフィラキシーや化学物質過敏症(MCS)も念頭に置く
過敏症とは免疫学的,非免疫学的すべてを含んだ包括的な概念である。各種過敏症のうち,特に非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)に対する過敏症では,狭義のアレルギー,不耐症などの概念を明確に意識して診断する必要がある。また,近年では非免疫学的機序の化学物質過敏症/シックハウス症候群や,NSAIDsを含む多種の薬剤に対する過敏症も増加している。図1にそれぞれの概念の関係を示す。
一方,狭義のアレルギーは,免疫グロブリン(immunoglobulin:Ig)Eもしくはそれに類似した抗原抗体反応による過敏症状を指す。不耐症とは,NSAIDs不耐症のように,シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase:COX)-1を阻害する作用を持ったアスピリンなどのNSAIDsにより,内因性プロスタグランジン(prostaglandin:PG)E2が減少することで生じる非免疫学的薬理学的な変調現象である。一般的にアレルギーの用語は,過敏症の概念で使用することもあるが,NSAIDアレルギーについては,できるだけ狭義のIgE機序のアレルギーとした概念で使用したほうが正確である。