あすか製薬の降圧薬バルサルタン錠「AA」の原薬から、人への発癌性が指摘されている「N-ニトロソジメチルアミン」(NDMA)が検出された問題で、同社は9日、同薬の安全性評価をまとめた説明資料を公表した。発癌リスクについては、1日最大用量の160mgを販売期間の4年間、毎日服用した場合でも「1万5000人~3万人に1人が生涯その曝露により過剰にがんを発症する程度」とし、きわめて低いとの見解を提示。1日服用量が160mgより少ない場合や服用期間が短い場合は「さらにリスクは低くなる」としている。
「AA」は、国内では2014年6月~17年3月に販売され、16年3月までに推計約1万9000人に処方された。今年7月、中国の浙江華海薬業(ファーハイ)が製造した原薬にNDMAが混入していることが欧州で判明し、あすか製薬が自主回収を行った。回収は8月で終了しており、現在市場には流通していない。
説明資料は医療関係者向けと患者向けの2種類あり、いずれも薬事・食品衛生審議会(厚生労働相の諮問機関)の調査会での審議を踏まえたもの。同薬の分析過程では、NDMAと同様に発癌性が指摘されている「N-ニトロソジエチルアミン」(NDEA)も検出されたものの、含有量はわずかであることから、調査会は発癌リスクを上昇させるほどの影響はないと結論づけた。
厚労省によると、国内で販売されているバルサルタン製剤のうち、NDMAおよびNDEAが検出されたのは「AA」のみ。両物質は、中国工場での原薬製造工程で副産物として生じ、混入したとみられるという。