下痢は非常によくみられる症状である。世界的にみると,10億人を超える人々が年に1回以上,急性下痢症にかかっており,途上国において,下痢は主要な死亡原因になっている。4週間以上続く下痢は「慢性下痢」と呼ばれ,QOLを低下させ,全身を消耗させることもある。
便秘も頻度の高い症状であり,下剤を常用する高齢者なども多いが,病的な便秘では重篤な疾患が原因となっていることもあるので,注意を要する。では,今回の症例をみてみよう。
下痢の定義は,「異常に水分の多い便または水様便が何度も排出されること」である。量的には,1日に200gを超える便がある場合とされる。持続期間によって次のように分類される。
・2週間未満:急性
・2~4週間:持続性
・1カ月を超える期間:慢性
下痢と区別すべきものに次のようなものがある。
・偽性下痢:少量便を頻回に排出。便意促迫と関連がある。疾患としては過敏性腸症候群,直腸炎。
・便失禁:不随意的な便排出。神経筋疾患,直腸肛門の解剖学的異常による。
・便栓:便が腸管に溜まり持続的に流れ出る。直腸診で診断可能。寝たきりの高齢者にみられる。
残り1,345文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する