少子高齢化が急速に進む中,地域医療にも大きな変化が起きています。地域医療の担い手となるプライマリ・ケア医には,これまで以上に,臓器別の診療科にとらわれない幅広い診療,多様なアクセスを担保する診療,そして,多職種からなるチーム医療のマネジメントを実践する能力が求められています。
こうした医療ニーズの変化に対応できる医師を増やすために,全日本病院協会と日本プライマリ・ケア連合学会が協力して,「総合医育成プログラム」を実施しています。これは,内科や外科など,既に自分の専門領域に関する経験をもつ医師が,プライマリ・ケアにキャリアを広げていくことを支援する研修プログラムで,休日にオンライン研修を積み重ねることで,現在の勤務を続けながら,実践的な総合診療能力を修得できるよう構成されているのが大きな特徴です。
本プログラムは,「プライマリ・ケアの現場で一歩踏み出せるようになる」ことを目標として,日常よく遭遇する疾患・病態に対して,適切な初期対応や長期的なマネジメントに主眼を置いて開発されています。また,地域で活躍する総合医には,医学的知識・技術(テクニカルスキル)だけでなく,組織人としての技術(ノンテクニカルスキル)が必要不可欠であるため,人と関わり,人を育て,組織をマネジメントするスキルをテーマとする研修コースも設けられています。
このたび,この総合医育成プログラムで取り扱った教育コンテンツの中から,選りすぐりのクリニカルパールを紹介する連載を開始することになりました。執筆を担当するのは,プライマリ・ケアの現場のニーズを熟知しているエキスパートであり,プライマリ・ケア医にとって「まさにそこが知りたかった!」というポイントを,見開き2ページで簡潔にわかりやすく解説して頂く予定です。明日からの臨床に役立てて頂ければ幸いです。
筑波大学医学医療系教授 前野哲博