大動脈弁置換術(AVR)は歴史のある治療法であり,長期予後も安定しているが,侵襲度が高く,手術不能・手術高リスク患者が存在する
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)は手術不能症例に対する低侵襲治療として導入されたが,現在短期成績は非常に良好で,中程度リスク症例にも行われつつある
個々の患者における治療法選択にはハートチームでの話し合いが必要である
大動脈弁狭窄症(aortic stenosis:AS)は最も頻度の高い心臓弁膜症である。その成因として,先天性,リウマチ性,加齢変性があるが,近年の高齢化の進展とともに,加齢変性によるAS患者が増加している。加齢変性によるASは比較的緩徐に進行し,重症となっても無症候のまま経過する例も多いが,狭心症,失神,あるいは心不全という臨床症状が出現してからは急速に悪化し,生命予後も悪い。一般的には,狭心症出現からは約5年,失神出現からは約3年,心不全出現からは約2年程度との報告もある。したがって,適切なタイミングで診断・治療を行うことが大切である1)。
ASの診断そのものは聴診で比較的容易に可能である。重症度診断は通常心エコー検査で行われるが,心臓カテーテル検査による血行動態評価が補完的に必要となることもある。左室収縮能が低下した症例では,重症ASであるにもかかわらず圧較差が小さいこともあり,注意を要する。ドブタミン負荷心エコーなどを必要とする場合もある。
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