下肢の静脈弁不全により静脈血が逆流することで生じる病態であり,無症状から浮腫や潰瘍に至るまで様々な症状を呈する。すべてが外科的治療対象というわけではなく,個々の症状や活動性,保存的治療への適合性などを鑑みて適応を判断する。
自覚症状の有無や皮膚所見,超音波検査上の静脈逆流所見の有無を的確に把握する必要がある。症状は夕方になるにつれて増悪する下肢の重苦しさや浮腫,こむら返りなどがある。臨床所見や原因,不全静脈の部位等を総合的に評価する分類として,2020年に改訂されたCEAP分類がある。皮膚所見はC項目を参考とする。下肢静脈エコーでは深部静脈血栓症の有無や,大伏在静脈や小伏在静脈の径と逆流の有無・程度,不全穿通枝の存在などを確認する。また,2021年に日本静脈学会より「下肢静脈瘤の超音波検査所見の標準的記載法」がインターネットで公開されたので参考とする。
時にKlippel-Trenaunay-Weber症候群や深部静脈低形成,動静脈奇形などの稀な疾患や深部静脈血栓後の血栓後症候群との鑑別を要する。また,潰瘍を形成している場合は閉塞性動脈硬化症との鑑別のため,必ず下肢動脈の触診など動脈血流の評価を併せて行う必要がある。
自覚症状が強く来院する人もいるが,インターネット等の情報に触発され,心配になり来院する人が多い。病態や下肢局所の予後,そして生命の危険に関わることはほとんどない疾患であることを十分に説明した上で,弾性ストッキングによる保存的治療や血管内治療による手術療法を提示すると,保存的治療を選択する人が多い。
手術を選択する場合,伏在静脈型の静脈瘤であれば局所麻酔下に1470nmレーザーや高周波(ラジオ波)による血管内焼灼術を行う。静脈瘤切除を行うかどうかは,患者本人と相談の上,個別に判断している。
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