肺動脈狭窄症は,弁性,弁下,弁上,分岐部,に分類され,先天性心疾患の8~10%に合併すると報告される。内科領域では,肺動脈弁尖の肥厚,融合によるものが多く,本稿では,弁性狭窄について述べる。
日本循環器学会のガイドライン(2021年版)において,右室収縮期圧による重症度は,軽症(50mmHg未満),中等症(50mmHg~体血圧),重症(体血圧以上)に分類される。軽症例では,心雑音を聴取するのみで,無症状である。中等症の年長児,成人では,労作時の呼吸困難,易疲労感がみられる。重症例では,新生児期,乳児期から心房間の右左短絡によるチアノーゼ,哺乳不良,体重増加不良など右心不全症状,年長児以降で,労作時呼吸困難,運動能低下,胸痛,不整脈,右心不全を認める。
触診上,重症例で右室性の心尖拍動,thrillを触知する。聴診上,胸骨左縁上部に最強点を有する駆出性収縮期雑音を聴取し,左背部に放散する。駆出性クリックを軽症,中等症で聴取する。重症例ほど雑音が長く,ピークが遅れる。心電図所見は,軽症例では正常である。中等症以上で,右軸偏位,右室肥大,右房肥大を認める。胸部X線では,軽症でも左第2弓の突出を認め,中等症以上で右房の拡大も認める。心エコー検査で,ドーム状(dooming)の肺動脈弁を認め,多くは三尖で肥厚する。主肺動脈に狭窄後拡張を認める。簡易ベルヌーイの式から右室肺動脈間圧較差,三尖弁閉鎖不全から右室-右房間圧較差が評価される。心臓カテーテル検査は,カテーテル治療目的で行われる。右室-肺動脈圧較差は,心エコー検査の値が心臓カテーテル検査の測定値より高いことも多いが,カテーテル治療の適応は,心エコー検査の値で決定される。
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