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大動脈解離[私の治療]

No.5199 (2023年12月16日発行) P.46

齋木佳克 (東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座心臓血管外科学分野教授)

登録日: 2023-12-14

最終更新日: 2024-09-18

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  • 大動脈解離は大動脈壁が2層に剝離し血流腔が2腔になった状態で,脆弱な中膜を背景にして,高血圧によって生じるずり応力などの血行力学的な負荷が大動脈壁に加わって,内膜に裂孔が形成されることで発症する。大動脈緊急症の代表的疾患であり,生命を脅かす重篤な病態である。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    突然の,自覚する胸背部痛が典型的初期症状である。大動脈分枝の狭窄または閉塞により惹起される臓器虚血症状を伴うことも多い。失神や片麻痺などの脳虚血性神経症状,冠動脈狭窄や急性閉塞による前胸部痛などの冠動脈虚血症状,腹痛を伴う腸管虚血症状,下肢痛をきたす下肢虚血症状で発症することも少なくなく,これらの症状を呈する病態の鑑別診断のひとつとして大動脈解離を想起することが重要である。

    【検査所見】

    大動脈解離を生じている部位による病態分類がなされ,上行大動脈に解離腔が存在している病態をStanford A型,解離腔が上行大動脈以外に存在している病態をStanford B型と分類する。したがって,造影CT検査で確定診断が得られる。本来の大動脈内膜に囲まれた腔を真腔と称し,中膜に生じた新たな腔を解離腔または偽腔と称する。解離腔に血流がない病態を血栓閉塞型解離,もしくは壁内血腫と分類する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    緊急手術を要することが多いため,迅速なCT検査による精確な画像診断と遅滞のない内科的および外科的介入が治療の鍵となる。上述のStanford分類が診断と治療法選択のための第一段階となる。Stanford A型では多くの場合,緊急手術の対象となる。Stanford B型では保存的治療が選択されることが多い。第二段階として,解離腔の状態を識別する。血栓閉塞型と判明した場合には,緊急対応を回避できることが多い。第三段階として,臓器灌流障害の有無について,造影CT所見をもとに分枝の形態と末梢臓器の造影効果で判断する。

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