株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

認知症疾患診療ガイドライン2017[ガイドライン ココだけおさえる]

No.4934 (2018年11月17日発行) P.50

中島健二 (国立病院機構松江医療センター院長)

古和久典 (国立病院機構松江医療センター診療部長)

登録日: 2018-11-16

最終更新日: 2018-11-13

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 主な改訂ポイント〜どこが変わったか

    1 ‌「認知症疾患治療ガイドライン2010」の発行後に報告された新知見をふまえ,2017年に「認知症疾患診療ガイドライン2017」が発行された1)

    2 ‌認知症患者の増加に対して行政的な取り組みも強化され,認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン),認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)が示された。また,認知症疾患医療センター,認知症初期集中支援チームの活動が進められた。さらに,2014年には医師の任意通報制度,2017年には改正道路交通法の運用が開始された

    3 ‌“Alzheimer病”,“Alzheimer型認知症”などの用語,診断の進歩,バイオマーカー研究の進歩や治療の進歩をふまえた記載がされている

    4 ‌Lewy小体型認知症(DLB)についても新たな診断基準が示され,治療薬の認可などを受けて診断・治療の進歩を含めて記載されている

    5 ‌変性性認知症疾患として,新たに嗜銀顆粒性認知症(AGDあるいはDG),神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)の臨床的特徴が記載されている

    1 総論:2010から2017へ

    2011年にNational Institute on Aging-Alzheimer’s Association(NIA-AA)から,Alzheimer型認知症,軽度認知障害などの認知症診断基準が示された。使用可能なAlzheimer型認知症治療薬も4種類となり,さらに,厚生労働省からの「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱い」文書による非定型抗精神病薬の使用に関する記載などのいくつかの変化や,ガイドライン活用の利便性を期待して「認知症疾患治療ガイドライン2010:コンパクト版2012」が発行された。

    2013年に「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,5th Edition(DSM-5)」2)が公開され,“神経認知障害群(neurocognitive disorders:NCDs)”という表現が用いられた。これには,“せん妄”や“major and mild neurocognitive disorders”が含まれ,この日本語訳としては,“認知症(DSM-5)”と“軽度認知障害(DSM-5)”が用いられる2)

    前頭側頭葉変性症に関して,2011年にRascovskyらによるInternational Behavioural Variant FTD Criteria Consortium基準3)が出され,意味性認知症・進行性失語症に関するGorno-Tempiniらの報告4)もなされてきた。また,米国心臓協会/米国脳卒中協会による血管性認知症に関する包括的ステートメント5)では,血管性認知症の前駆段階としての血管性軽度認知障害(vascular cognitive impairment-no dementia:VCI-NDまたはvascular mild cognitive impairment:VaMCI)や血管性認知障害(vascular cognitive impairment:VCI)といった用語も提唱された。

    行政的にも,2012年に①認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン),2015年に②認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)が策定された。また,画像検査・バイオマーカーの進歩など多くの研究成果も報告されてきた。

    これらをふまえ,2014年にガイドラインの改訂が決定され,作業が進められ,2017年8月に「認知症疾患診療ガイドライン2017」1)(以下,本GL)が発行された。

    残り3,182文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top