近年,新しいバイオマーカーの開発,抗原検査の進歩により,重要な感染症である敗血症や,肺炎,腸炎の診断に役立つ検査が利用できるようになった。新しい検査法をうまく使いこなすことは,感染症の治療成績に影響を及ぼすことにもつながるため,それぞれの特徴を理解しておくことが重要である。また,長い間期待されていた遺伝子検査の感染症診療への応用も現実味を帯びてきた。微生物検査は大きく変わりつつあり,新しく登場してきた主要な検査のポイントを述べる。
敗血症の診断補助として参考となる血液中のマーカーとして,プロカルシトニンとプレセプシンがある。CRP(C反応性蛋白)が軽症の感染症でも上昇するのに対し,これらのマーカーは炎症が限局的な場合はわずかな上昇にとどまり,血流感染症に進展すると急に上昇するという特徴を持つ。いずれも短時間で誘導され,半減期も短いことから,鋭敏な敗血症のマーカーとしての活用が広がっている(表1)。
プロカルシトニンの基準値は0.05ng/mL未満であるが,敗血症の多くは0.5ng/mL以上を示し,2.0ng/mLを超えるような症例においては,しばしば臓器障害やショックを伴うため,予後が悪くなる1)。後述するプレセプシンとともに,保険診療上は月に1回までの算定であるため,多くの症例では敗血症を疑う場合にワンポイントで利用する機会が多い。
しかしながら,プロカルシトニンの半減期は24時間程度と短いため,治療に応じて短期間で値が変動していく。たとえば,治療開始翌日にプロカルシトニン値が上昇する症例では予後が悪いことが指摘されており2) ,診断・治療の方針を再評価すべきである。また,抗菌薬中止の判断指標として,全身状態も改善した頃のプロカルシトニン値が最高値の20%以下あるいは0.5ng/mL未満となった場合には,抗菌薬が中止できるのではないかとも報告されている3)。
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