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睡眠時無呼吸症候群はCommon disease─かかりつけ医こそCPAPに取り組んでほしい[トップランナーが信頼する最新医療機器〈在宅医療編〉(9)]

No.4938 (2018年12月15日発行) P.14

登録日: 2018-12-13

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)は現代の国民病ともいわれる。SASは長期間未治療の場合、虚血性心疾患などさまざまな生活習慣病の危険因子となるが、患者の顕在化が進んでいないことが大きな課題となっている。連載第9回では、SASの早期発見・早期治療の重要性から持続陽圧呼吸療法(CPAP)を提供しているクリニックの実例を紹介し、かかりつけ医がSAS診療に取り組む意義と効果について考える。【毎月第3週号に掲載】

SASが社会的な注目を浴びたきっかけは、2003年に起きた山陽新幹線の緊急停止。新幹線の走行中に運転手が約8分間も居眠りをしており、オーバーラン後に急停車した。後日、運転手は重症

SASと診断され、大惨事を招く可能性があったとして問題化した。

SASの脅威は睡眠不足による意識障害にとどまらない。さまざまな生活習慣病の危険因子として作用することが知られており、早期診断・治療が重要になる。

SASの患者数は人口の5~10%と推計されているが、最も有効な治療法であるCPAPを実施しているのはわずか50万人程度。こうした状況を踏まえ、地域のかかりつけ医として2016年の開業時からSAS診療に取り組んでいるのが、東京・中野区にあるいたや内科クリニックの板谷英毅院長だ。

CPAPが治療の第一選択肢

循環器専門医としてキャリアを積んできた板谷さんがSAS診療に取り組み始めたのは、勤務医時代に日本循環器学会が「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(GL)」を策定したことがきっかけだった。GLは心不全のSAS合併率は76%に及ぶと指摘。心不全患者へのSASスクリーニングが推奨され、狭心症や心筋梗塞、不整脈など多くの循環器疾患でもSAS加療が推奨された。GLを踏まえ板谷さんは、心不全での入院の回避や血圧コントロールのために、CPAPの提供を始めたという。

「SASの治療は主にマウスピースかCPAPの2種類です。診療報酬の算定要件(別掲)を満たす必要はありますが、現状でCPAPほど効果がある治療法はありません。CPAPは糖尿病のコントロールにも有効です。低酸素になるとインスリン感受性が落ちますが、CPAPを続けるうちにSpO₂が上がり、インスリンを離脱できた症例も複数経験しています」(板谷さん)

板谷さんはCPAPがポリファーマシーの解消にも一定の効果があると指摘する。「難治性高血圧症の患者さんの血圧コントロールがCPAPで改善し、薬剤数を減らすことができた症例も多数経験しています」

メーカーのサポート体制がカギ

板谷さんが導入しているのは、帝人ファーマの医療機器販売会社である帝人在宅医療のSAS診療トータルサポート(https://medical.teijin-pharma.co.jp/zaitaku/product/cpap/)。CPAP機器(表)で主に使用しているのは「スリープメイトR10」だ。従来のオートセットモードに加えて、新たに2つのアルゴリズムを搭載した主力モデルで、夜間の高圧による覚醒やレム期のイベントを防ぐために圧変動が穏やか、という特徴がある。このほか旅行や出張先などニーズの多様化に対応した「スリープメイトRAirMini」という機種もある。専用アプリで操作を行うため、本体は非常にコンパクトながら高機能だ。

板谷さんは帝人在宅医療のCPAPを導入した理由についてこう語る。「最も重視したのはバックアップ体制です。CPAPは機器をレンタルするシステムで、患者さんのサポートはメーカーにお願いすることになります。CPAPは対症療法なので、治療を継続することが大切です。帝人さんのカスタマーセンターは365日体制で、扱いからメンテナンス、トラブル発生時まで丁寧に対応してくれるので、医療機関は診療に集中することができます」

自宅配送サービスで簡易検査が可能に

帝人在宅医療のトータルサポートでは、在宅で可能な簡易診断については検査機器自宅配送サービスがあり、レポート作成も行う。データ管理は「ネムリンク」というネットワークシステムを用いて行う仕組みになっている。データ管理に加え、外来指導ポイントの表示や患者向けレポート作成など診療サポート機能も充実。ネムリンクでは複数医療機関によるデータ共有が可能で、医療連携にも活用できる。

SAS診療は患者との信頼関係を強くする

板谷さんは現在約30人にCPAPを実施しているが、SAS診療では患者の顕在化が重要と指摘する。「自覚症状がなくても高血圧や糖尿病のコントロールが難しい患者さん、メタボの人はSASを疑う必要があります。臨床症状とSpO2とのバランスも重要です。SAS合併の生活習慣病では症状がなくても低酸素になることがあるため、積極的に検査を勧めるべきでしょう」

CPAPは1998年に保険適用となったが一般の開業医への普及はそれほど進んでいない。しかし板谷さんは「SASはもはやCommon disease」と強調する。

「一般内科医の先生には『難しい』『面倒くさい』という印象があるかもしれませんが、SAS診療のシステムは進化していて、検査もデータ管理も難しくありません。一部の専門的疾患を除いてSASの治療を受けるためだけに病院や睡眠専門クリニックに通院するのは患者さんにとって大きな負担となり、治療を止めてしまう要因にもなります。高機能化したネーザルマスクを使い、“鼻呼吸を育てる”ことで生活習慣病のコントロールがしやすくなります。SAS診療には、かかりつけ医と患者さんの信頼関係をより強いものにしてくれる効果があると実感しています」

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