【実施済の臨床試験データを収集し,モデルに基づき再加工することで,具体的解を得る】
MBMAは,メタアナリシス(MA)と数式モデル解析を組み合わせた新規拡張型データ解析法である。①効果の経時的変化や用量反応性,影響因子の定量的評価,②観察期間や用量が異なる試験の統合処理,などを可能とする。
メトホルミンによる血糖コントロール不良例に追加する効果的な新規糖尿病治療薬(DPP-4阻害薬,GLP-1受容体作動薬,SGLT2阻害薬)を検討する。PubMed/MEDLINEなどのデータベースから,MAの手法に従い,選択基準に適する文献を収集する。この場合,メトホルミンにそれぞれの併用薬を追加し,薬効を評価している論文(ランダム化二重盲検試験)が対象となる。
次に,文献中の表や図,本文中から空腹時血糖値(FPG),HbA1cなどの薬効データを抽出し,併用開始後の経過時間と生データ値のセットとして加工する。薬剤服用後のこれらの値の時間推移は,間接反応モデルにより表現された。モデルを構成する諸パラメータの推定は,母集団薬物動態解析ソフトであるNONMEM®が活用しやすい。構築したモデルに基づくシミュレーションにより,メトホルミンに追加投与する場合,GLP-1受容体作動薬が他の2群に比べてFPGおよびHbA1cを最も減少させることが示唆された。
これらの糖尿病治療薬を直接比較した臨床試験は少なく,エビデンスづくりに有用となる。適正薬剤の選択や処方設計,相互作用の検索などへの応用が可能で,新たな臨床試験は必要ではない。治験プロトコルの作成や精度向上にも活用されている。
【解説】
家入一郎 九州大学薬学研究院薬物動態学教授