厚生労働省は23日、「免疫アレルギー疾患研究10カ年戦略」を初めて策定した。「発症予防・重症化予防によるQOL改善」やアナフィラキシーなどによる「防ぎ得る死の根絶」を目指す。厚労省は、2019年度予算案として9.8億円を計上している。戦略に基づく取り組みは4月からスタートする方針。
アレルギー疾患対策基本法(2015年施行)に基づいて17年に策定された指針では、研究戦略の必要性を明示していることから厚労省は昨年、「免疫アレルギー疾患研究戦略検討会」を設置した。厚労省が今回定めた戦略は、同検討会の報告書を踏まえたもの。
戦略では、発症や重症化を防ぐため、免疫アレルギー疾患の本態解明や疾患特性が現れるライフステージに注目した研究の必要性を指摘した。臨床情報や血液、皮膚、遺伝学的情報の解析などで病態を「見える化」した上で治療を行う層別化医療を推進する。免疫アレルギー疾患は、遺伝学的要因に加えて在胎中を含む環境要因等が複雑に絡み合って発症すると考えられることから、生活の中で発症・重症化予防、症状軽減が可能になるような研究も進める。
アスピリン喘息、アレルギー性気管支肺真菌症、気管支喘息を背景に成人で発症する疾患については、小児に比べ重症化や致死性が高まることや再燃を繰り返すといった特徴を指摘。対策に向けた研究に取り組むとした。
致死的な経過をたどるアナフィラキシーなど一部の重症免疫アレルギー疾患に対しては、「『防ぎ得る死』をゼロにするための方針とその具体化が必要」と明記。救急科、麻酔科など関連する診療科との連携や、発症機序に関する解析を推進する。
また適切な医療を受けることができず、難治性・治療抵抗性に至る症例も存在することから、標準治療の普及も目指す。
戦略ではまた、疾患活動性や生活満足度を客観的に評価する指標を創出する必要があるとした。
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