【細胞破壊が少ないとされる「液状細胞診」を用いることで診断率が向上】
眼内悪性リンパ腫には全身の悪性リンパ腫の経過中に眼内に病変を生じる場合と,眼・中枢神経を原発としてリンパ腫が生じる場合があり,後者を「眼原発悪性リンパ腫」と呼ぶ。網膜下に黄白色の斑状病巣を形成する「眼底型」と,オーロラ状硝子体混濁を呈する「硝子体型」に大別され,硝子体型は長期間,炎症性疾患としてステロイドにより治療され,診断までに時間を要することが多く,「仮面症候群」とも呼ばれる1)。
組織学的に多くが「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」であり悪性度がきわめて高いため,本疾患が疑われる場合には混濁除去による視機能向上を兼ねて,診断目的で硝子体手術による生検が行われる。
硝子体生検は,検体量が少なく,検体を直接塗抹する従来の細胞診では標本作製時に細胞が壊れ,正確な診断が困難であることが多かった。近年,特殊固定液で検体を固定してから塗抹することで細胞集積率が高く,細胞破壊が少ないとされる「液状細胞診」を用いることで診断率が向上している2)。また,眼内液を用いたサイトカイン測定(インターロイキン-10/6比>1),免疫グロブリンJH遺伝子再構成,細胞表面マーカーなどの検査と併せることで,より確実な診断が可能である。
生命予後の観点からも,脳病巣出現に先立って本疾患の診断ができるという意味で,硝子体生検の果たす役割は大きい。
【文献】
1) 岩橋千春, 他:あたらしい眼科. 2013;30(3):337-41.
2) Tripathy K, et al:J Cytol. 2015;32(1):17-20.
【解説】
金子 優 山形大学眼科講師