蘇生措置を拒否する意思表示をしている心肺停止状態の傷病者への対応を巡り、総務省消防庁は14日、「救急業務のあり方に関する検討会」の作業部会に報告書の素案を示した。今後の方向性として、「人生の最終段階を迎える準備を進めることで、必要のない救急要請を避けることが重要」との認識を明示。蘇生中止に関するさらなる知見を集め、人生の最終段階における医療・ケアの取り組み状況も見ながら「救急隊の対応の標準的な手順等について検討を進める」と打ち出した。
同庁が昨年実施した実態調査によると、救急現場で傷病者の家族等から本人が心肺蘇生を望んでいないと伝えられる事案を経験した消防本部は全体の85%(616本部)に上り、そのような事例における方針を「定めている」とした消防本部は全体の45.6%(332本部)だった。
方針を定めている消防本部の中でも対応は分かれている。主な対応としては、①心肺蘇生拒否の意思表示を伝えられても、蘇生を継続しながら医療機関へ搬送する、②かかりつけ医等からの指示の下に蘇生を中止する、または実施しないこととする―の2つがある。最近では、東京消防庁の諮問機関が②に近い対応方針を採用すべきとの答申を取りまとめている。
消防本部ごと、事案ごとに対応方針や状況が大きく異なることから、総務省消防庁は現段階で蘇生中止の基準を示さない方針。蘇生を望まない傷病者への対応については、4月以降に開く次回以降も議論を継続する。