(大阪府 I)
【骨密度を介さず骨折リスクを高める2型糖尿病やCOPDについてはリスクを過小評価する傾向がある】
FRAX®は,40~90歳の人の骨折リスク評価のツールとして作成されました。わが国の原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準では,骨粗鬆症と診断される人に加えて骨折リスクの高い人も薬物治療の該当者となります。一般住民や医療機関受診者において,FRAX®を使って主要骨粗鬆症骨折の確率を求めると,75歳以上の女性のうち90%以上でその確率は20%を超えるので,75歳以上のほとんどすべての女性は薬物治療に該当することになります。そのため,骨密度若年成人平均値(young adult mean:YAM)70~80%においては,75歳未満という縛りがつくられました。
しかし,75歳以上の患者に対しても,個人の骨折リスクを評価することは大変重要で,FRAX®値が高い場合には,骨密度を測定することを考慮してよいと思われます。FRAX®を,40~90歳の骨折リスク評価に利用することをお勧めします。
ご指摘の通り,続発性骨粗鬆症としては,1型糖尿病は含まれていますが,2型糖尿病は含まれていません。原発性副甲状腺機能亢進症,透析・慢性腎臓病,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)など骨折リスクが高い疾患も含まれていません。
FRAX®には危険因子として骨密度が入っているので,続発性骨粗鬆症の中で,その疾患が骨密度低下を起こせば,その結果として骨折リスクが高まると考えられていました。しかし,骨密度を介さず骨折リスクを高めることが明らかになった2型糖尿病やCOPDについては,FRAX®値は,実際の骨折リスクより骨折確率を過小評価しています。
たとえば,2型糖尿病の罹病期間5年以上では実際の骨粗鬆症性骨折発生はFRAX®値の1.2倍,10年以上で1.5倍,大腿骨近位部骨折は5年未満でも1.5倍,10年以上では2.1倍であったと報告されています1)。2型糖尿病,COPDの骨折リスクは,FRAX®で求められた骨折リスクより高いと考えたほうがよいと思われます。
【文献】
1) Leslie WD, et al:J Bone Miner Res. 2018;33 (11):1923-30.
【回答者】
藤原佐枝子 安田女子大学薬学部教授