医師法21条に関する厚生労働省医政局医事課長通知(表)に対して医師から懸念が出ている問題で、吉田学医政局長が13日の衆院厚生労働委員会で答弁した。従来の厚労省の21条に関する解釈と同趣旨であるとした上で、「医師が異状を認めるか否かを判断する際に考慮すべき事項を改めて示した」と説明した。これは橋本岳議員(自民)への答弁。
医師法21条に関して厚労省は、2012年に当時の医事課長が厚労省検討会の場で、都立広尾病院事件の最高裁判決を踏まえ、「死体の外表を見て、異状がある場合に警察署に届け出るということ」「厚労省が(21条に基づき)診療関連死を届け出るべきと言ったことはない」などと発言したほか、2014年には当時の田村憲久厚労相が国会で「医師法21条は医療事故等々を想定しているわけではない」などと答弁している。
13日の衆院厚生労働委員会で橋本議員は、医師法21条の解釈に関しては紆余曲折を経て落ち着いた面があると指摘し、「その中でこの通知が出たので、医療関係者の中で、ややびっくりした方、ざわついた方が多かったのでは」と述べ、通知の趣旨を質問した。
これに対し、吉田局長は「従来の解釈あるいは従来の私どもの法21条について申し上げていることと何ら変わることもなく、同趣旨を改めて確認した」と答弁。一方で、「21条に基づく届出の基準は、すべての場合に適用し得る一律の基準を示すことが難しいことから、個々の状況に応じて死体を検案した医師が届出の要否を個別に判断すると考えている」と指摘。その上で、「医事課長通知においては、異状死体の届出の基準そのものではなくて、医師が異状を認めるか否かを判断する際に考慮すべき事項を改めて示しているもの」と説明した。
14日には、医療法務研究協会(小田原良治理事長)が開催した懇談会に厚労省医政局の佐々木健医事課長が出席した。佐々木医事課長は今回の通知に関して「従前の(厚労省の解釈・発言の)内容と同じ」と強調。さらに、「検案した医師が、警察に届け出るべきかを個別具体的に考える際には、都立広尾病院事件判決などを見ていただくことも大切なことだと思う」との認識を示した。
表 厚生労働省医政局医事課長通知「医師による異状死体の届出の徹底について」(2019年2月8日) |
医師が死体を検案するに当たっては、死体外表面に異常所見を認めない場合であっても、 死体が発見されるに至ったいきさつ、死体発見場所、状況等諸般の事情を考慮し、異状を認める場合には、医師法第21条に基づき、所轄警察署に届け出ること |