近視性網膜分離・剝離は,後部ぶどう腫による網膜の後方への牽引と,硝子体皮質や網膜前膜などによる前方への牽引が相乗して生じる
視力低下の原因となっているか,黄斑円孔網膜剝離への進行が高リスクである,牽引性黄斑部網膜剝離・全層黄斑円孔合併の場合は,手術適応である
治療法は硝子体手術を中心とした外科的治療であるが,中心窩温存ILM剝離(FSIP)法は安全性,有効性の高い手法である
病的近視では眼軸の延長や後部ぶどう腫(眼球後部の局所的な突出)に伴い,様々な病変が生じる。近視性網膜分離症(myopic macular retinoschisis:MRS)はTakanoらによって1999年に初めて報告され,病的近視眼の後極部に生じる網膜の内層もしくは外層が分離する病態である(図1)1)。近視性網膜分離・剝離は,高度な視力低下の原因となる黄斑円孔や黄斑円孔網膜剝離の前駆病変であるのみでなく,それ自体も視力低下の原因となる。一方で,黄斑円孔網膜剝離の前駆病変としては,近視性網膜分離・剝離のみではなく網膜前膜や硝子体黄斑牽引症候群など多彩な病変が含まれるため,2004年にPanozzoらにより,病的近視の牽引に伴って生じる後極部病変に対して近視性牽引黄斑症(myopic traction maculopathy:MTM)という名称が提唱された2)。しかしながら,網膜前膜や硝子体黄斑牽引症候群は,病的近視に限らず認められる病変であり,本稿では病的近視に特異的な網膜分離・剝離の病態や診断・治療について概説する。