緑内障様視野障害は,強度近視患者における様々な合併症の中で最も重要
強度近視患者において緑内障様視野障害の発症率は,通常の緑内障と比べて高い
強度近視眼における緑内障様視野障害の視野障害パターン,進行スピードは通常の緑内障とは異なる
強度近視眼の病態の本態である眼球の延長により,視神経乳頭とその周囲に構造異常が生じることで緑内障様視野障害が生じることが多々あり,各病態を把握することが重要
わが国を含む東アジア諸国を中心に,全世界において近視患者数は急速に増加している。その中でも深刻な視力・視野障害に至る様々な症状をしばしば合併する強度近視患者の増加は,大きな社会的懸念となっている。強度近視の本態は眼球の過度な延長(眼軸延長)による極端な近視化であり,一般的に眼軸長26.5mm以上(通常は24.5mm程度),屈折度は-8.0ジオプトリー(D)を超えるものと定義されている。強度近視の合併症の中でも最も頻度が多く,かつ深刻な合併症のひとつが緑内障様視野障害である。わが国における緑内障の有病率は約5%であるのに対し,強度近視眼では約13%1)と通常より高頻度に緑内障様の視野障害が発生することからもこの疾患の重要さがわかる。
一般的に緑内障は大きくわけて,わが国において最も頻度が高い「正常眼圧緑内障を含む広義の開放隅角緑内障」と,「角膜と虹彩の間に位置する房水の流出路であるシュレム管がある隅角部が狭くなり,進行すると房水の流出が障害されて眼圧が上昇することで緑内障発作を起こす閉塞隅角緑内障」に分類される。強度近視眼では眼球が過度に引き伸ばされるが,同じく隅角部位も引き伸ばされる。そのため非強度近視眼に比べ強度近視眼では,隅角部は広く開大していることから閉塞隅角を生じることは稀であり,強度近視眼の緑内障はほぼ全例で開放隅角緑内障であると言える。