不登校は誰にでも起こりうる。文部科学省の定義は「何らかの心理的,情緒的,身体的あるいは社会的要因・背景により,登校しないあるいは,したくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち,病気や経済的な理由による者を除いたもの」である。実際は,病気や経済的理由による欠席,年間30日未満の欠席,保健室登校はできても教室に入れない場合等も含み,「一定日数以上本来の教室で授業を受けられない児童生徒」を広く不登校と考えて支援していく。文部科学省の狭い定義に従うと,2017年度の不登校は小学校3万5032人(生徒数の0.54%),中学校10万8999人(同3.25%),計14万4031人で過去最多を更新している。
不登校では複数の要因が複雑に絡み合っていることが多い。
学業不振:発達の遅れや偏りがあり,その子に合った教育環境が設定されていない。発達の評価と環境の再調整をする。
人間関係:いじめ,教員との不適切な関係,部活でのトラブル,家庭不和等である。いじめは端から見ると些細な状況でも,本人にとっては大きなトラウマであることが多い。教員の不適切な言葉掛けや乱暴な対応によるトラウマも少なくない。
発達障害:親子関係・人間関係・集団行動・学習・進学・進路等,生活の広範囲に不適応が出現する。自閉スペクトラム症の感覚過敏によって不登校に陥る場合も少なくない。
愛着障害:乳幼児期に安心感や対象恒常感を獲得できないと,社会生活の荒波に揉まれて容易に不適応に陥る。分離不安を呈したり,甘え・依存が強まったり,過剰適応が破綻したり,無気力に陥ったり,様々な臨床像を呈する。学年が上がると反社会的な行動に発展し,意図的に不登校となる場合もある。
トラウマ体験:不適切な養育や強烈ないじめに起因する不登校。不適切な養育には身体的・性的・情緒的虐待に加え,必要なケアや適切な教育を与えないネグレクトも含まれる。
心身症:頭痛・腹痛・不眠・朝起き不良・食欲不振・微熱・倦怠感等の身体的不定愁訴から不登校に陥る。身体症状の背後に上述の発達的・心理的要因が隠れていることを銘記したい。
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