SUMMARY
超高齢社会である昨今,終末期医療における意思決定支援の取り組みとしてACPに注目が集まっている。ACPは患者・家族の幸せを目的とした介入手段のひとつであり,適切な時期に適切なプロセスを経て行われるべきものである。
KEYWORD
目的と手段
目的と手段はよく混同される。ADやACP,さらには医療行為そのもの,これらはすべて手段であり目的ではない。我々医療者の目的はあくまで患者や家族の幸せであり,それを実現するための手段のひとつとしてACPを紹介する。
PROFILE
2016年札幌医科大学卒業。北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院初期臨床研修修了。現在は北海道勤医協 総合診療・家庭医療・医学教育センター(GPMEC)専攻医としてJA北海道厚生連 倶知安厚生病院 総合診療科に勤務中。
POLICY・座右の銘
幸せはいつも自分の心が決める
2018年11月,advance care planning(以下ACP)として知られていた概念の愛称を「人生会議」に決定したと厚生労働省が発表した。この呼称が今後普及していくのか気になるところである。ACPの考え方は,昨今の超高齢社会で医療・ケアを実践するにあたって非常に重要である。ここではその概要を述べる。
人は自らの生命が危機に瀕した際に,約70%が医療やケアを自分で決めたり望みを人に伝えたりすることができなくなると言われている1)。そのような状況に備えて,世界中で様々な意思決定支援の取り組みがなされてきた。代表的なものに事前指示(advance directive:AD)の作成がある。これは患者自身が意思決定できなくなったときのために,事前に自らが望む医療行為の内容(内容指示)や代理意思決定者の指名(代理人指示)を書面に残しておくものである。しかし実際には,無数に存在する終末期のパターンすべてを想定して指示を残しておくことは困難で,急変時の状況がADで想定されたものでなければそれを適用することは難しい。また,事前に作成していたADが医療者に伝わっていない,伝わったとしても医療に反映されないなど問題点が多く,結果的にADは意思決定支援の有効な手段とはならなかった。これはADの作成自体が目的化されてしまい,肝心の作成過程の共有や現場への周知が不十分であったことが一因と考える。