脊髄腫瘍は硬膜と脊髄との関係で分類すると理解しやすい。硬膜の外に発生する硬膜外腫瘍,硬膜の中にあり脊髄の外に発生する硬膜内髄外腫瘍,そして脊髄の中に発生する髄内腫瘍がある。硬膜内髄外腫瘍,硬膜外腫瘍,髄内腫瘍の順に多い。硬膜内髄外腫瘍は神経鞘腫と髄膜腫,髄内腫瘍は上衣腫と星細胞腫で頻度が高い。
わが国では最も発生頻度が高い。神経線維腫との画像上の鑑別は困難である。性差はなく,40~50歳代に多い。発生部位は,胸椎>腰椎>頸椎の順に多く,約90%が脊髄神経後根から発生する。腫瘍の局在に一致した疼痛および発生母地となる神経根支配領域の放散痛で発症することが多い。半数以上が硬膜内に発生するが,5~25%で椎間孔から脊柱管外へ進展する(ダンベル型)。
緩徐に発育するため,単純X線写真やCTで骨侵触像を認める。CTで石灰化がみられることは稀であり,その場合は髄膜腫を考える。MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像で等信号を呈し,ガドリニウム(Gd)で造影される。腫瘍内部に囊胞を形成することがあり,不均一に造影される。腫瘍は可動性があり,体位によって移動する(mobile tumor)。
無症候性や症状が軽微な場合はMRIで経過観察を行う場合もある。持続する痛みや運動障害を認める場合,または脊髄の圧迫が著明な場合は手術適応がある。
神経鞘腫は柔らかく,血管に富んでいる。バイポーラーで焼灼し,縮小しながら摘出する。発生母地となる神経は腫瘍の頭部尾側で切断する。ダンベル型の神経鞘腫を全摘出すべきか脊柱管内の摘出のみを行うかについての結論は出ていない。残存腫瘍の再発はないとの報告もあるが,15~25%に再発を認めたとの報告もある。
神経鞘腫についで多い。中年期の女性に多く,胸椎>頸椎>腰椎の順に好発する。腰椎に発生することは稀である。歯状靱帯付着部の硬膜内層または神経根が硬膜を貫通する部位から発生することが多い。そのため,約80%が脊髄の前外側または後外側に位置する。硬膜外へ伸展する場合や,稀に硬膜外のみに発生することがある。胸椎レベルに多く,背部痛または肋間神経痛で発症することが多い。歩行障害で発見されることもめずらしくない。
CTで石灰化が認められれば髄膜腫の可能性が高い。MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を呈し,Gdで均一に造影される。腫瘍と接している硬膜が肥厚し,強く造影されることがある(dural tail sign)。
多くの場合が後方アプローチで摘出可能である。大きな腫瘍の場合は,内減圧を行いながら摘出する。腫瘍付着部の硬膜全層を切除することで腫瘍の再発を回避できるが,硬膜の修復と術後の髄液漏が問題となる。そのため,腫瘍付着部の硬膜内層を鋭匙等で搔爬し,さらに焼灼凝固することで再発を予防できると考えている(Simpson grade Ⅱ)。
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