痙攣性てんかん重積状態は重篤な神経障害をもたらしうるため,小児救急診療において迅速かつ適切な対応が求められる。発作が30分以上持続する場合,または発作が30分以上にわたって反復し,発作間欠期に意識が回復しない場合に重積とすることが多い。しかし,早期治療介入の必要性があるため,臨床的立場からより短い持続時間で定義する考え方が多くなっており,近年,5分ないし10分という提案がなされている。
重積状態では,通常意識障害を伴い,全身の強直発作(四肢体幹を硬くする発作)や,間代発作(四肢の屈曲伸展を反復する発作)などが起こる。バイタルサインと意識状態,痙攣の部位,四肢の肢位や顔の向き,筋緊張の状態,眼球の位置等を確認する。
乳幼児では熱性痙攣,急性脳炎・脳症,細菌性髄膜炎などの急性疾患,年長児ではてんかん,既往に神経学的異常を有する慢性疾患が多くみられる。電解質異常,低血糖,先天代謝異常症などの代謝性疾患が原因となることもある。成人と異なり,脳血管障害や頭部外傷の頻度は低い。
バイタルサインのモニター,血液検査(血糖,血液ガス分析,カルシウムを含む電解質,肝機能,腎機能,血算,CRP,アンモニア,乳酸,抗てんかん薬内服中の場合血中濃度),頭部CT検査を考慮する。病歴,意識状態を含む神経学的所見,髄膜刺激症状などから疑われる原因疾患に応じて,追加の血液検査,血液培養,髄液検査,脳波検査,頭部MRI検査などの適応を決定する。
病院到着時に5分以上痙攣が持続している場合には,重積状態と判断して迅速に治療を開始する。まず,危険のないようベッドに寝かせ,痙攣の状態,呼吸・循環の確認を行って全身状態を把握し,気道を確保して酸素投与を行う。気道確保が困難であればエアウェイ使用や気管内挿管も行うが,来院した時点ですぐに気管内挿管が必要になることは少ない。
痙攣による呼吸抑制で低酸素血症や高炭酸ガス血症をきたしていても,痙攣自体を頓挫させると回復することが多い。まずは体位を整えて気道を確保し,バイタルサインのモニタリングを開始する。可能な限り速やかに点滴ルートを確保して,抗痙攣薬の静脈内投与にて止痙を図る。それぞれの薬剤の特性を理解した上で,痙攣が止まるまで順次適切な薬剤を選択しながら,速やかに痙攣を頓挫させる。同時に,原因疾患の検索を行い,それに応じた治療を進める。
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