造血幹細胞レベルで生じた腫瘍化により,骨髄において巨核球が著増し,持続的な血小板増加がみられる。約半数の症例は診断時無症状で,血液検査値異常で偶然見つかることが多い。症状は,血栓症と出血によるものが中心で,血栓性イベントとして,脳梗塞や心筋梗塞,肢端紅痛症,血管性頭痛,めまい,頭痛などの微小血管障害による症状,出血性イベントとして消化管出血などが挙げられる。
WHO分類改訂版2017に準じて診断する。JAK2遺伝子V617F変異,CALR変異,MPL変異のいずれかの遺伝子変異が認められる。骨髄生検で,前線維化期骨髄線維症と鑑別しておくことが重要である。
生命予後は比較的良好なため,脳梗塞や心筋梗塞などの血栓性イベント,肢端紅痛症,血管性頭痛,めまい,頭痛などの微小血管障害による症状,消化管出血などの出血性イベントの予防が治療目標である1)。血栓症のリスクとしては,年齢60歳以上,血栓症の既往,血小板数150万/μL以上,のいずれかがあれば高リスク群とされるが,最近の血栓症リスク分類では,JAK2V617F変異の存在もリスク因子として抽出されている。
治療に際しては,血栓症のリスクファクターの治療とともに,抗血小板療法および血小板数のコントロールが必要である。低用量アスピリンによる抗血小板療法は,高リスク群と,低・中間リスク群でも,年齢≧60歳,コントロール不良の心血管リスク因子の存在,JAK2変異の存在,いずれかの因子があれば,服用が勧められる。ただし,血小板数が100万/μL以上の場合には,血清中のvon Willebrand因子が消費されるため,出血による合併症のリスクが高くなる。このため,von Willebrand因子活性が30%未満である場合は,アスピリンの併用は控えるべきである。
細胞減少療法による血小板数のコントロールとしては,ハイドロキシウレア,アナグレリド,インターフェロンα(わが国では保険適用外)が挙げられる。一般的には,臨床経過中に,60歳に到達,あるいは,血栓・出血性イベントが出現した場合には,直ちに細胞減少療法を開始する。あるいは,血小板数が150万/μLを超えて増加,進行性の骨髄系細胞の増殖(脾腫の増大など)などが出現した場合も細胞減少療法の適応である。
血小板数の目標値としては,40万/μL以下とされている。ハイドロキシウレア,アナグレリドともに血栓症の発症が有意に減少することが明らかにされている。ハイドロキシウレアは,二次性白血病のリスクの懸念もあることから,若年者では投与をできるだけ控える。白血病誘発性のないアナグレリドも初回治療薬として推奨される。ハイドロキシウレアでは,皮膚潰瘍や口内炎,アナグレリドでは,頭痛,動悸,貧血,下痢,末梢神経障害などの有害事象に注意する。
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