本疾患は2011年に中国で初めて報告されたマダニ媒介性ウイルス疾患である。2013年に初めて日本国内でも患者が確認され,その後,報告が相次いでいる。現在のところ,重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome:SFTS)の患者発生は西日本に限られているが,日本各地でSFTSウイルス保有マダニの存在が確認されており,今後SFTSの発症地域が拡大されることが予想される。
好発年齢は60歳以降が90%を占めており,高齢者に多い疾患である。マダニの活動時期の春から夏にかけて患者が多いが,真冬の発症例もわずかながら散見されている。SFTSは急激に重症化し,きわめて致死率が高い疾患であることから,迅速な診断と治療が望まれる。なお,国立感染症研究所感染症情報の死亡数は,患者報告時の死亡であり,正しい値を反映していない。全国の多施設調査によって,SFTSの真の死亡率は25~30%ときわめて高いことが明らかにされている。また,血液や体液を介した直接的なヒト-ヒト感染も報告されており,すべての医療従事者にとって適切な感染予防対策を熟知することも重要である。
最近,ネコやイヌとの濃厚な接触によって感染した事例が相次いで報告され,社会的にも問題となっている。特に,ネコはSFTSウイルスに感受性が高く,SFTSを発症したネコからの感染防止は喫緊の課題である。
潜伏期間は6~14日である。主な臨床症状は,38℃以上の発熱,消化器症状,肝障害,頭痛,筋肉痛,中枢神経症状,出血傾向,リンパ節腫脹などであるが,重症例では急速に多臓器不全に陥る。なお,マダニの刺し口は認められない場合も多い。検査成績としては,白血球減少,血小板減少,AST,ALT,CKなどの上昇や蛋白尿の頻度が高い。また,骨髄穿刺で血球貪食像を示すことが多く,LDH,フェリチンの上昇が認められる。
しばしば播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を示す血液凝固系の異常も認められる。SFTSの特徴的所見として,高度の炎症所見があるにもかかわらず,CRPの上昇が認められないことが多い。この所見は,つつが虫病や日本紅斑熱との鑑別に有用である。確定診断は,血液や組織からのSFTSウイルスゲノムの検出による。
現在,全国自治体の衛生研究所で,少なくとも定性的PCRによる検査が可能となっている。SFTSが疑われる場合には,直ちに保健所に連絡し,検査を進める必要がある。4類感染症に指定されており,診断した医師は直ちに最寄りの保健所への届出が必要である。
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