【ただ学校に行かせるのではなく,将来を見据えたサポートが重要】
時代の変化とともに不登校は変遷している。かつては経済的な理由や親の無理解で登校できない子どもたちが多かった。経済成長とともに長期欠席率は低下してきたが1970年代後半には上昇に転じている。これは7割の国民が第三次産業に従事する高度消費社会に入り,「学校で身につけるスキル」と「社会に出てからの労働内容や生活スタイル」との間のギャップが拡大して,学校へ行くことの価値が下がったため,と言われている。また,誰もが学歴を取得できるようになり,学歴の社会的な値打ちも下落してしまったことも関係している。学校へ行く価値よりストレスがまさるようになると登校意欲は失われてしまう。実際は,学校を休みそうにない子どもが理由もわからず欠席することも多くみられるようになった。
不登校の子どもたちへの支援のポイントは3つある。第一に,登校していたときのことを丁寧にとらえること。どう生きてどんなストレスがあったのか,その子の世界を理解する。第二に,将来の見通しや歩むべき道を本人と一緒に考えていくこと。内的な成熟に焦点を合わせ,進路選択も含めサポートする。第三に,今の生活を中身のある生き生きとしたものにすること。今の幸せがないままでは将来の幸せをイメージできない1)。
「ただ登校できるようにする」という視点ではなく,「この先どのように生きていくか」という視点でこれらの支援を行っていくことが重要である。
【文献】
1) 滝川一廣:教と医. 2014;62(3):200-7.
【解説】
久保洋一郎,金沢徹文* 大阪医科大学神経精神医学 *講師