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マントル細胞リンパ腫[私の治療]

No.4978 (2019年09月21日発行) P.42

永井宏和 (国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター血液・腫瘍研究部部長/血液内科医長)

登録日: 2019-09-20

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  • マントル細胞リンパ腫は非ホジキンリンパ腫に分類され,月単位で進行するB細胞リンパ腫である。全リンパ腫中の3~5%程度の頻度である。病理検査でサイクリンD1が陽性となることが特徴である。Ann-Arbor病期Ⅲ,Ⅳの進行期である症例が7割を超え,約5割の症例が骨髄病変を認めるなど,節外病変を伴うことが多い。若年者症例はリツキシマブを含む寛解導入療法に引き続き,大量化学療法を行うことが推奨されている。66歳を超える症例はリツキシマブと化学療法の併用療法が行われる。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    表在のリンパ節腫脹で医療機関を受診することが多い。他のリンパ腫と同様に無痛性,弾性硬で可動性がある。しかし,約3割に消化管病変,脾腫大を伴うことから,腹部症状が初発症状であることも少なくない。他のリンパ腫と同様に,発熱,盗汗,体重減少などのB症状を伴うこともあるが,頻度は高くない。

    【検査所見】

    病変の病理検査では,通常の染色に加え,免疫染色が正確な診断には必須である。サイクリンD1,CD5,SOX11など特徴的な蛋白が陽性となる。染色体検査(fluorescence in situ hybridization:FISH)などの遺伝子検査を行う,PET/CT検査,造影CT検査,骨髄検査(生検,穿刺)で全身の病変の広がりを検討する。そのほか心電図,単純X線(胸部,腹部),心臓超音波検査,採血(血算,尿検査,生化学,IL-2R,各種感染症検査)を行う。sIL-2Rは病勢の把握に有用であることがある。また,予後予測モデルとして,年齢,performance status,LDH値,白血球数を用いたマントル細胞リンパ腫国際予後指標(mantle cell lymphoma international prognostic index:MIPI)スコアが用いられる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    限局期と進行期で治療方針が異なる。

    限局期症例(臨床病期Ⅰ,Ⅱ)で単一照射野にて治療可能な場合は領域照射が適応となる。症例によりリツキサン®(リツキシマブ)を含む化学療法を行う。

    進行期症例は年齢により治療法が異なる。65歳以下で臓器機能が保たれている場合は,大量化学療法の適応となるため,寛解導入療法を施行し化学療法に反応性が認められた場合は自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を行う。

    66歳以上または臓器機能障害などで大量化学療法の施行が困難と考えられる症例に対しては,リツキサン®(リツキシマブ)を併用した化学療法を施行する。

    これらの初期治療により寛解は得られるが,ほとんどの症例で再発をきたし,生存期間の中央値は3~5年程度である。初回に用いなかった治療レジメンやびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同様の救援化学療法を行うことが多い。

    また,ブルトン型チロシンキナーゼ(Bruton's tyrosine kinase:BTK)阻害薬であるイムブルビカ®(イブルチニブ)は,単剤経口治療が可能であり,再発・難治症例に用いることができる。大量化学療法から再発した場合,同種造血幹細胞移植も治療選択となる。

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