4月1日から運用が始まった2016年度診療報酬改定は、医療関係者から概ね好意的な評価を得ている。2月10日の答申を受けて、日本医師会の横倉義武会長は「少ない財源の中、それなりの評価がなされた印象だ」と述べた。
年末の予算編成過程における風物詩の感さえある2年ごとの診療報酬改定率を巡る攻防だが、今回はことのほか呆気なく決着した。政府が『骨太方針2015』で社会保障費の伸びを年間5000億円程度に抑制する方針を打ち出していたため、あくまでその枠内で調整が進んだようだ。
改定率は、表の通り。診療報酬本体で+0.49%(国費ベースで500億円、医療費ベースで2100億円)となったものの、薬価・材料価格が▲1.33%となり、全体(ネット)は▲0.84%で実質2回連続のマイナス改定。これに市場拡大再算定による引下げ分(▲0.19%)を加えると、実質のネット改定率は▲1.03%となった。さらに新たに導入された特例拡大再算定の引下げ分(▲0.28%)を含めるとネット▲1.31%との見方もできる。厳しい財政事情の中、薬価が狙い撃ちされた形だ。
しかし、塩崎恭久厚生労働相は昨年12月21日の麻生太郎財務相との大臣折衝後の会見で、「重要なのは本体」と強調し、「より良い医療を確保するという意味においてそれなりの成果」と評価した。前回14年度改定では消費税率引上げへの対応が通常の改定率に上乗せされ、今回は薬価改定で「枠外」の引下げが行われるなど、改定を追うごとにネット改定率の持つ重要性が薄れてきたといえる。
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