SUMMARY
慢性疾患を抱える患者のケアには,患者の疾患,病い体験,コンテクストの情報収集を行った上で,患者の療養方針について相互意思決定が必要である。その相互意思決定には,shared decision makingが有用である。
KEYWORD
shared decision making(SDM)
医師・患者が利用可能な情報をもとに意見を表明し,一緒に意志決定する方法。協同的意思決定や共有意思決定,決断の共有などと訳される。近年,海外ではSDMに関する研究が活発になっている。
PROFILE
みちのく総合診療医学センターで家庭医療を学ぶ。現在も福岡県小郡市の家庭医療クリニックで診療しながら,北海道家庭医療学センターのフェローとして家庭医療の研鑽を積んでいる。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医。
POLICY・座右の銘
知るは一時の恥,知らぬは一生の恥 自分は変えられる
今回,患者中心の医療の方法の「共通の理解基盤を形成する」則ち,「合意点を探る」ことについて考えていく。
まず,疾患,病い体験・健康観,コンテクストについて情報収集を行う。そこから,医師と患者双方での問題は何かを明確にし,その診療のゴール(短期的,長期的),それぞれの役割は何かを,医師・患者間で合意し,相互意思決定を行う。
では,相互意思決定は具体的にどのように行うのがよいのだろうか。その方法のひとつに,shared decision making(SDM)がある。SDMは,医師・患者が利用可能な情報をもとに意見を表明し,一緒に意志決定する方法である。いくつかモデルがあるが,ここでは3段階モデル(図1)1)を述べる。
◆留意点
SDMのステップは図1の通りだが,大事なことは患者の反応を逐一確認することである。患者に困惑の表情,言い淀む様子がある場合には,話を中断し,「何か気がかりなことはありますか?」というように聞いてみるのが望ましい。
また,選択肢に対して中立的な立場でもよいが,患者の意見を尊重した上で医師の好みを提案してもよい。「医師の意見を聞きたい」「任せたい」と表明する患者もいるため,その場合,上記のように医師の好みを提案するか,もしくは最初からSDMではなく,「インフォームド・コンセント」として医師が一定の方針を説明し同意を得るのも1つの方法である。