2015年10月に医療事故調査制度が施行され、7カ月が経過した。全国からの医療事故の発生報告は、2015年10月19件、11月27件、12月36件、16年1月33件、2月25件、3月48件、4月34件と、7カ月で累計222件に達しているが、この報告件数が少ないとの見方が一部にある。今般の制度で第三者機関に位置付けられる日本医療安全調査機構が事前に想定した報告件数は「年間1300~2000件」であり、現在のペースはその3分の1~5分の1にすぎないからである。さらに、これを根拠として、本来報告すべき医療事故を医療機関が報告していないのではないか、と論じているメディアもある。それは本当なのだろうか。
まず確認しておきたいが、今般の制度の対象となる「医療事故」、すなわち「当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかったもの」と同一条件での全国の医療事故の発生件数は、これまで調査されていない。したがって、現在までの報告件数が多いか少ないかの厳密な議論はそもそもできない。それを踏まえて筆者は、入手可能な情報から、今般の制度になるべく近い条件で年間の医療事故発生件数を推計したので紹介する。
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